最短のsostenuto
ブラームスはパート系において「sostenuto」を単独で85回使用している。記載されたその場所からただちにテンポを落とすと解される。大抵の場合は「a tempo」等の記号によってリセットされるまでの効力である。持続時間が「最短のsostenuto」はどこにあるのだろうか?
「恐らく」と断らねばならないが、それはカプリチオop76-1の8小節目に存在する。その長さは16分音符3個分だ。その3個のうちの2個目に「rf」が付与されて、次の小節の「ff」へ拙速に飛び込むなと手綱を握っている。しかもこの「sostenuto」は、テンポリセッターを伴っていない。「言わんでも判るでしょ」状態なのである。その通りだ。リセット場所は言わんでも判る。次小節の冒頭でキッチリとリセットされねばなるまい。
さて、同曲の再現部は52小節から始まる。冒頭提示部の8小節目に相当する59小節目にも「sostenuto」が存在する。こちらは「sostenuto」の立ち上がりが16分音符で1個か2個早い。だから持続時間は16分音符4個ないしは5個となり、最短の座を8小節目に譲っている。こちらもテンポリセッターは欠落している。最大の疑問は8小節目では「rf」だったところが「sf」にすりかえられている点だ。
7月14日の記事「最短のpoco f」では、これを「fp」の誤りとする見解を披露したが、ここは違う。説得力と含蓄に溢れた「sostenuto」だと思う。この「sostenuto」によるわずかな「タメ」が続く「ff」の効果を高めている。肝心なところに力を集中するためのバックスイングのような効果がある。
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