誤植
印刷物中に存在する文字の誤り。
これを撲滅するために行うのが校正だ。一般書籍では1回2回3回やるのだそうだ。「ブラームスの辞書」でも3回やった。うち2回は校正のプロに依頼したものだ。聞くところによると業界では「何度やっても出るもの」が誤植だそうだ。もちろんゼロにしなければならないのだが、校正を4回5回6回と重ねて行くのは時間的にも経済的にも苦しいものがある。
もちろんと言っては不謹慎だが、残念ながら「ブラームスの辞書」にも誤植がある。
つい先日のことだ。CDショップを徘徊していて1760円2枚組のCDを見つけた。名前から察するにフランス系のピアニストのCDだ。メンデルスゾーン、シューマン、フランク、フォーレなどブラームス以外の作曲家の作品も収録されているが、「Brahms op118」という記載があったので手にとってみた。裏面に「Track10~12Brahms:intermezzo op118」と書かれている。トラック10~12ということは3曲ということだが、ブラームスの作品118ならば6曲のピアノ小品集なので辻褄が合わない。またop118の中にはインテルメッツォが4曲あるのでこれまた数が合わない。CDの中を見れば正確な曲名が判るのだが、開封するわけにも行かない。op118-2コレクターの私としては、作品118の中の4曲のうちの3曲が収められていると都合良く解釈して購入した。作品118の4曲のインテルメッツォから1曲を落とす場合、2番イ長調を落とすことなどあり得ないという信念からである。
帰宅して封を開けるのももどかしく収録曲名を確認してみた。
- intermezzo Esdur
- intermezzo Bmoll
- intermezzo Cismoll
上記の通りだった。作品118の4曲のインテルメッツォの調性は、イ短調、イ長調、ヘ短調、変ホ短調のハズだ。なんのことはない。ジャケットに印刷されていた「op118」は「op117」の誤りだったのだ。誤植というにはあまりに杜撰である。ジャケット中の「op117」となるべきところが全て「op118」になっているばかりではなく、CDのA面にまで「op118」と書かれている。ディレクター、執筆者はもとより、校正者も見落としたということなのだ。見落としたと言うより知識の欠如なのかもしれない。あってはならぬ想像だが、「愛情の欠如」さえ疑われる。
何よりも何よりも、演奏したピアニスト本人はノータッチだったのだろうか?一生懸命演奏したのだろうに、これではせっかくの「op117」が浮かばれない。
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