のための
世の中で「のだめ」が話題になっている最中、2週連続してのだめネタを発信した後、しかも今日はテレビ放映のある日だ。このタイミングでこのタイトルはいささか紛らわしいが、実は「のだめ」とは関係がない。といいつつ実はこの時期を敢えて狙っていたりもする。明らかにのだめネタのフェイクである。濁音を示す点々を落とした訳ではないということだ。
「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」や「左手のためのシャコンヌ」の中で使われている「のための」が本日の話題である。これが英語でいう「for」であり、ドイツ語であれば「fur」(uはウムラウト)に相当する。いわゆる前置詞だ。前置詞のこういう使い方は思うだにスマートである。これを杓子定規に「のための」と訳すのだが、こなれていないと思う。強いて品詞分解をするならば格助詞「の」+形式名詞「ため」+格助詞「の」とでも解するのかもしれないが、ワンパット多い感じがして座りが悪い。
実は前置詞有りの言語を操る人たちも、内心はスマートだと思っていないのかもしれない。その証拠に「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」や「ピアノのためのソナタ」はそれぞれヴァイオリンソナタやピアノソナタという通称が用いられている。マッコークルもこうした表記をしているので、この手の通称も権威あるものになっている。この程度ならまだ判りやすい部類で、「ヴァイオリンとチェロとピアノのための三重奏曲」が「ピアノトリオ」と通称されるのは、よく考えると合点が行かない。我が家の娘は私に「ピアノ三重奏曲なのに何故ヴァイオリンの音がするの?」と真顔で質問してきたことがある。彼女はピアノ3台だと思っていたようだ。当然クラリネット五重奏曲はクラリネット5本だと思っているに違いない。
こうした混乱は慣れによって減じられもするが、入門者にとっては最初のハードルの一つだろう。何かと気持ちの悪い「のための」を避ける言い回しとしての工夫と位置づけてお茶を濁す次第である。
どこの業界でも「勝ち馬に乗る」のはマーケティングの鉄則である。この度私もフェイクで乗ってみたという訳だ。この記事が「のだめ」というワードで検索されるのか興味深い。
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