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2006年10月 6日 (金)

作曲工房

「作曲の裏側」あるいは「作曲の舞台裏」のこと。作曲家が作品を仕上げて出版に至るまでの過程のことだ。一般に「着想」「スケッチ」「手稿」(草稿)「印刷決定稿」「校正稿」「初版」の諸段階があると解される。さらに作曲家が知人と交換した書簡にこれら諸段階について言及した部分がある場合も少なからず認められる。無論その全ての段階が紙に書かれた現物として現在まで保存されているわけではない。作曲家によりあるいは作品によりそれぞれ事情が違う。

現在に残された音楽作品は、それら諸段階の結果としての楽譜が残るだけである。一般素人にとっては、数々の素晴らしい作品がどのような過程を経て生み出されたのか興味は尽きない。しかしながら、こうした素人の興味に十分に答えるだけのエピソードや物証は必ずしも豊富ではない。

ベートーヴェンは実は豊富な方に属する作曲家である。耳が不自由だったせいで、ベートーヴェンは周囲の人間と筆談でコミュニケーションをした。その筆談に使った紙がまとまった量残っていることで思わぬところから作曲の裏側を覗くことが出来る。また膨大な量のスケッチ帳を残しているおかげで、著名な作品の「着想時期」が推定出来る。さらにベートーヴェンにはチェルニーという秘書同然の弟子がいつもそばにいたことも大きい。

一般にそうした物証は時代が新しいほど残り易いものなのだだが、ベートーヴェンより100年近く新しいブラームスなのに「作曲工房」が明らかになっていない点で横綱格である。

作曲の過程で使用したスケッチを残すことを潔しとしなかった節がある。スケッチどころか完成された作品でさえ、納得が行かねば容赦なく破棄してしまっていたくらいだから、スケッチをうっかり破棄し忘れるなどということがあるハズもない。だから結果として交響曲のような大作が、見た目突然ポコッと出来たかのように見えるという寸法だ。完成の日付と場所がわかっているだけという作品も少なくない。完成前に友人知人と意見交換をした作品の工房だけが、かろうじて友人たちの証言によって推測できるに過ぎない。第一交響曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第一番などがその例である。もっぱら相談をもちかけられていたヨアヒム、クララ、リーズルは膨大な情報を持っていたと思われるが、そのあたりの「裏事情」をペラペラと周囲に漏らしてはいない。そのへんの口の堅さも相談相手としての資格の一つなのだろう。

大きな例外が一つある。ピアノ三重奏曲第一番だ。1854年に出版された36年後、ブラームスは自らの手で改訂を施す。1890年の改訂版を完成形と見れば、初版はある意味で途中経過と位置付けられる。ブラームス自ら「作曲工房」を解放したと言える。他の作品で見せたブラームスの徹底した隠蔽ぶりから見るとこのピアノ三重奏曲第一番はよっぽどのことだと思わなければなるまい。

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コメント

<空の風様

そうでしたか。ベートーヴェンのお墨付きではないンですね。
ピアノ教則本のバイブルっぽい位置付けになっていますし、なんといってもあのリストの先生ですからねぇ。現代でもひ孫弟子(もういないかも)ややしゃご弟子がたくさん活躍してるんじゃないですか。

ベートーヴェン日記。。。ベートーヴェンの悲痛な叫びとも言えるものですね。涙しながら読みました。
そういえば。。ベートーヴェンは、チェルニーの練習曲を使うことを薦めていないようですね。。。意味深(笑)

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