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2006年10月12日 (木)

作品8の改訂

10月7日の記事「柳の下にどじょうを探しに」で述べたピアノ三重奏曲第1番作品8初版をブラダスに取り込む作業が完了した。

ピアノ四重奏曲第1番のシェーンベルグ編管弦楽版の取り込みに比べると拍子抜けするくらい、短時間で終わった。スコアにして27段の管弦楽曲とピアノトリオでは音符の量が違うので予想はしていたが呆気なかった。データの分析に着手する。

それに先立って根源的な疑問に触れねばならない。なぜ作品8の三重奏曲だけが改訂の対象になったのだろう。

作品8の三重奏曲は1854年の出版で、ブラームス初の出版された室内楽の座に君臨しているが、ブラームスの全作品の中で出版後に作曲者自らの手で改訂が加えられた作品は他にはない。もとよりブラームスは若い頃から作品の出版に慎重で、恩師シューマンに薦められた作品でさえ全てが出版された訳ではない。だから少なくとも出版に漕ぎつけたという時点で、作品8のピアノ三重奏曲はある種の基準をクリアしていたハズである。

作品8の三重奏曲は1861年に弦楽六重奏曲第1番の出版までの7年間、ブラームス唯一の室内楽の座にあった。その間音楽界からは、シューマンが華々しく紹介した気鋭の作曲家の作品として認知されていたハズである。良くも悪くも注目されていたハズなのだが、ピアノ協奏曲第1番のような悪評のエピソードは聞かない。

生まれた時、既にブラームスはこの世になく、彼の全作品が当たり前のように存在する現代の愛好家は、しばしば歴史的な視点を忘れがちである。ブラームスの全作品は既に「与件」として存在している。もっと言うとCDショップに行けばバロックから無調音楽までが自由に手に取れるのだ。

ブラームスの同世代の人々はそうではなかった。室内楽を例にとれば、今日話題のピアノ三重奏曲から最後のクラリネットソナタまでの24曲が40年の間に小出しにされたと言っていい。CDやLPが無かったとはいえ、次の作品が出るまで人々はじっくりと作品を吟味する時間があった。ブラームスの室内楽24曲は、そうした吟味を経ながらただの1曲も「ダメ出し」されていないのだ。

そんな中作品8だけが唯一改訂が施されているという事実はもっと顧みられていい。作品8初版の出版時には、一定の基準に照らしてゴーサインを出したブラームスだが、その後経験を積んで、その基準を引き上げたと考えるのが自然である。作品8初版だけが引き上げられた基準を満足しなかったという訳だ。お陰で作品8は今も他の室内楽同様の永続性を獲得している。もっぱら改訂版ばかりを聴いている耳には、確かに初版はなじみが薄い。

そうした基準引き上げの痕跡が音楽用語使用面に影を落としていないかと考えるのがブログ「ブラームスの辞書」の立場である。毎度毎度大げさな話にしてしまう癖が止まらない。

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