ブラームスザール
ウイーン楽友協会小ホールのこと。もちろんネーミングライツではない。これが伝統というものか日本にありがちな取ってつけたような感じがしないのはさすがである。
1990年11月28日新婚旅行でウイーンを訪れた際、最初に出かけたコンサートの会場だった。雲の上を歩いているような気分で出かけた。演目はシューベルトのリーダーアーベントだ。8日連続演奏会の4日目だ。1815年と1816年の作品だとポスターに書いてあった。料金は100シリング。1200円だ。
特筆されるべきは演奏者。バリトンがヘルマン・プライで、ピアノがレオナード・ホカンソンだ。生唾もののメンツだ。おまけに場所がウイーンのブラームスザールで1200円ではバチが当たりかねない。惜しむらくは演目がシューベルトだったことだ。これが「四つの厳粛な歌」だったりしたら卒倒ものである。
とはいえシューベルトはヘルマン・プライの十八番である。うまい下手よりも印象に残っているのは、歌と歌の間のトークだ。もちろんドイツ語だから全く理解できなかったが、聴衆がよく笑っていた。ウイットに富んだ語り口だということは不思議と伝わってきた。みんなプライの人柄を知っていて、トークも楽しみにしている感じだ。
プライはフィガロがはまり役であった。ファッシャーディースカウの伯爵との丁々発止は痛快だった。シューベルトだけではなくブラームスの歌曲もいい。「小粋」という感じ。大きな子供っていうようなイメージ。「いかにおわすか我が女王」op32-9なんかはまりきっていた。このほど廉価版で「四つの厳粛な歌」と民謡からの抜粋のCDが出て思わず買ってしまった。
彼もまたブラームスザールの思い出の一コマだ。
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