FAEソナタ調査報告
12月12日の記事「FAEソナタ」の中で予告した通り、「FAEソナタ」をブラダスに取り込んだ。伝ブラームス作曲のピアノ三重奏曲イ長調の調査の一環にもなると考えた。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2006/12/post_e66c_1.html
このほど「FAEソナタ」のブラダスへの取り込みと調査が完了したので報告する。
11月23日の記事「ピアノ三重奏曲イ長調調査報告」の中で「真作説に不利な所見」として、音楽用語の密度の薄さを挙げているが、これを撤回せねばならない。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2006/11/post_4428.html
ピアノ三重奏曲イ長調のスケルツォつまり第2楽章は247小節の間に125の音楽用語がちりばめられていた。ピアノ三重奏曲第1番初版との比較においては、分布の密度が薄すぎることを根拠に「真作説に不利」と判定したが、FAEソナタは正真正銘の真作であるにもかかわらず、全259小節の間に音楽用語がわずかに54個だった。ピアノ三重奏曲イ長調の半分以下の密度だった。
うかつな断定は慎まねばならない。ここにお詫びして訂正するが、11月23日の記事本文の改訂は行わずに注意書きを付与する。
- FAEソナタの音楽用語は全体にシンプルである。ダイナミクスはほぼ「ff」「f」「p」「pp」の4種といえる。「mf」が2つだけあるが全体としては無視し得よう。
- シンプルな中ではあるが、「poco」は用いられているし「ritardando」も存在する。さらにテンポリセット系の「a tempo」「in tempo」も使われている。この両者の区別が曖昧なこともブラームスの癖をキチンとトレースしている。「poco」のような微調整語に加え「ritardando」「a tempo」「in tempo」のようなテンポ変動系の用語が出現しないイ長調三重奏曲の特異性を際だたせる結果になった。
- 特記すべきは「sf」スフォルツァンドの不在だ。FAEソナタにはスフォルツァンドが出現しない。これはきわめて特徴的な現象だが現段階でこれ以上の言及は保留したい。
イ長調三重奏曲の真作説に不利な所見は一つ撤回となったが、「微調整語の不在」「テンポ変動語の不在」の2つは相変わらず「真作説に不利」な状況だ。
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