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2006年12月20日 (水)

交響曲の製作期間

第2交響曲の作品解説ではしばしば「ブラームスとしては異例の速さで完成した」と表現される。1877年の夏の間約4ケ月で完成されたことを指している。ブラームスの交響曲のスコアを写譜することを考えれば4ケ月は短い。交響曲の完成形が頭の中に存在していたとしても、ただそれを楽譜に転写する作業だけで1ケ月はかかるだろう。他人に客観的に伝達可能な楽譜にダウンロード出来て初めて完成といえるからだ。

ブラームスは夏の間、6月から9月の4ケ月間をウイーンから離れて避暑地に赴くことが常だった。行き先は必ずしも一定ではなかったが、第2交響曲の夏はペルチャッハ、第3交響曲の夏はウイースバーデン、第4交響曲ではミュルツシュラークといった具合だ。第2交響曲は、避暑の間に出来上がったことを意味しているのだ。第3交響曲も着手はウイースバーデン到着後で、10月にウイーンに帰還した際には完成していたとされるから作曲期間は4ケ月を超えないと推定されている。

第4交響曲は、ひと夏では完成しなかったとされている。1884年と1885年の二回の避暑期間を作曲に費やしている。ひと夏だった場合、作曲期間を4ヶ月とすることは妥当だが、二夏だった場合は最初の避暑の始まりから、2年目の避暑の終わりまでを作曲期間と認定するのだろうか?つまり1年と4ヶ月だ。

小学校1年からピアノを習い始めた女の子がいたとする。中学高校と中断して大学で4年間習ったとすると彼女のピアノを習った期間はどう数えるべきだろう。16年と言えるのだろうか?中断期間の中高6年は算入せず10年とするのが妥当と考えるがいかがだろう。第4交響曲の例ならば、夏二回の避暑の期間8ヶ月を作曲期間とすべきだということだ。

第2第3が4ヶ月、第4が8ヶ月ということになる。さてさて問題は第1交響曲だ。ご存知の通り完成は1876年だ。この作品が既に1855年には構想されていたことが何人かの友人によって証言されていることから、「1876-1855=21」という引き算が行われて、21年をかけて作曲されたというレッテルがいつも第1交響曲について回ることになった。着手と完成の間に存在するリードタイムと作曲期間は厳密に分けて考えねばなるまい。第1交響曲の作曲期間を21年と見るのは先ほどの女の子のピアノを習っていた期間を16年と認定するようなものだ。あるいは21年の間に毎年存在した避暑の期間に必ず第1交響曲を作曲していたとしても84ヶ月に過ぎない。21年間ベッタリ作曲に没頭していたことが証明できない限り、第1交響曲の作曲期間を「21年」とは断言できないはずだ。あくまでも中断期間不算入でなければなるまい。どうしてもというなら「作曲の途中に長い中断があった」と表現すべきである。

第2交響曲を「異例の速さで作曲された」と称する裏には、「21年もかかった第1交響曲に比べてとても短い」という書き手の思い込みが見え隠れする。また「ベートーヴェンの偉大な交響曲を意識したために21年もかかった」というニュアンスも透けて見える。第1交響曲の作曲に実際かかった時間の長さはともかく、「長い時間をかけて作ったことを単に強調したい」という下心が見え見えだ。そんなことをしなくても十分素晴らしい曲なのだ。最後のワンピースを埋めるため、あるいは余分なワンピースを取り去るために要した時間であって、作曲に要した時間ではない。完成に21年も費やされたと本気で考えていてはブラームスに失礼だと思う。単に機が熟すのを待っていただけという可能性は常に考慮しておきたい。

実際の作曲にかかった時間は、他の3つに比べて極端に長くはないと思う。

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コメント

<旅人様

いらっしゃいませ。かなり昔の記事なのに見つけ出していただいて
ありがとうございます。

ふむ、なるほど。恐れ入りました。

<Claris様

いやあ、それほどでも。

ブラームス好きな人は、多いンじゃあないでしょうか。

アルトのパパさまは、ブラームスを心底敬愛していらっしゃるのですね。

<moco様

ホンの独り言でございます。
マメにコメントいただけて嬉しいです。

ふむ〜な〜る@ 
そうなると私のピアノ歴は短いかもしれないですね。(笑)
始めたのも6歳からですし。。挫折あるし。。後で計算してみます(笑)
21年かあ。。芸術してるとあっという間に年月がたってしまいますね。

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