クリスマスの舞台裏
昨日12月25日の記事「テネラメンテクリスマス」の舞台裏だ。47名という偶然が忠臣蔵を思い出させてくれて笑えた。
本当は中間部に入るところと、再現部の冒頭でも計時してラップタイムを出せればよかったのだが、時間が無くなってしまった。時間を計るのは結構骨が折れる。音楽を聴いてしまうと正確に計れないのだ。時間を計ることに集中しないとダメというのが苦痛だった。そのことを除けばかなりの手間であるにもかかわらず楽しい作業だった。嫌いな曲ではやれないと思う。最初の入りのアウフタクト、連続する2つの8分音符だけでも、各人各様の個性があって楽しい。38小節目の若干のテンポアップや、中音域でのアルペジオの歌い方にも個性が宿る。
全員の楽譜に「Andante teneramente」と記されているのか心配になる。速ければ良いというものでもないし、遅ければ良いというものでもないが全体の傾向としては「遅くなって来ている」と断じてよかろう。2002年の山根弥生子を例外とすれば1969年のクリーンを最後に5分を切った演奏がない。特に1992年のアフェナシェフとポゴレリチの2人は遅い側の頂点を築いている。ポゴレリチのメトロノーム値42.68は、ケンプの倍のテンポだ。アベレージ+3α超は驚異的な遅さである。
一般に正規分布する母集団があった場合、アベレージ±2αの範囲内に全体の95%のデータが収まると高校でならった。事実今回の結果でも、速い側は筆頭のケンプでも2αの範囲に収まる。遅い側でポゴレリチの他にアフェナシェフが2α超を記録しているに過ぎない。47人中2人が2αを超えている。つまり逆に言うと95%は2αの範囲内ということになり、先に述べた統計の常識にかなっている。
ただし3α超のデータの存在する今回のケースは特異である。先ほどの常識の範囲内ということで、全体としてはこれらの集団が正規分布であると推定出来るから、ポゴレリチの遅さが突出していると判定出来よう。
無論演奏の良し悪しはテンポだけで決まるものではない。それを承知で今回は演奏時間の長さだけを異常にクローズアップしてみた。当然好みは分かれようが、演奏者にとってはみな正解のテンポなのだろう。「Andante teneramente」の楽譜を見ての演奏ながら、この多彩さには驚かされる。ちなみに演奏者たちの国籍は以下の通りだ。
- ロシア 9名
- ドイツ 8名
- 日本 9名
- アメリカ 3名
- フランス 3名
- オーストリア 2名
- カナダ 2名
- アルゼンチン 1名
- ウズベキスタン 1名
- ベルギー 1名
- スペイン 1名
- ノルウエイ 1名
- ポーランド 1名
- ルーマニア 1名
- セルビアモンテネグロ 1名
- スロヴェニア 1名
- スェーデン 1名
- スイス 1名
- トルコ 1名
世界中で愛されているということを実感出来る。私が日本在住ということ考慮すると日本人の数字は割り引く必要があるかもしれない。独唱歌曲では閑古鳥が啼くロシアが母国ドイツを押さえて第1位だ。泣く子も黙るロシア楽派のご威光だろう。独唱歌曲と同様に閑古鳥なのがイタリアだ。協奏曲は弾いているピアニストはいるのだが、小品は避けられているようだ。
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<Claris様
滅相も無いっ!!!
統計の味付けを加えることで駄文もごまかしが利くという見本です。
投稿: アルトのパパ | 2006年12月26日 (火) 17時28分
毎度のことながら頭が下がります!
土台とボーダーラインがしっかりしていると、
読み手としても、とても気持ちいいです♪
>47名という偶然が忠臣蔵を思い出させてくれて笑えた。
という文章を読んで私は笑えた。
投稿: Claris | 2006年12月26日 (火) 16時48分