マイスキーの無言歌の続き
ミッシャ・マイスキーという名高いチェリストが、ブラームスの歌曲をチェロで演奏している。ヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」のチェロ版の余白に入っている。血も涙もある選曲と配列になっていることは既に昨年11月4日の記事「マイスキーの無言歌」で言及した。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2006/11/post_ab83.html
このほどその続編を見つけて購入した。前から出ていたのだが、ジャケットには「チェロソナタ」と大書されてあるので見落としていた。
ブラームスの2曲のチェロソナタの間に以下の7つの歌曲が置かれている。
- 「五月の夜」op43-2 変ホ長調
- 「ミンネリート」op71-5 ハ長調
- 「夏の宵」op85-1 変ロ長調
- 「月の光」op85-2 変ロ長調
- 「野に一人いて」op86-2 ヘ長調
- 「夢に遊ぶ人」op86-3 ハ長調
- 「死は冷たい夜」op96-1 ハ長調
見ての通り全部長調の曲だ。加えて作品番号に注目願いたい。アルバム冒頭のチェロソナタ第1番op38と末尾の同第2番op99の間に7曲全てが収まっている。しかも配列は作品番号の若い順になってるではないか。21年の間をおいて書かれた2曲のチェロソナタをお気に入りの歌曲で繋ぐという意図は明白である。全楽章が短調になっている唯一のソナタでアルバムを立ち上げることとのバランスか、7曲の歌曲は全て長調で、しかもフラット寄りになっている。この7つの歌曲にはアルバム全体の緩徐楽章か間奏曲のニュアンスが充満している。
前回のアルバムは「四つの厳粛な歌」からの3曲を中央に置き、長調短調を取り混ぜて自由に配置していた。
さらに、この2種のアルバムを両方手に入れても、重複する曲がないのも嬉しい。1枚目のアルバムにチェロソナタを持って来ずに温存した意図さえあったと思われる。
それにしても、今回の選曲もセンスと意図を感じさせるものだ。特に私のお気に入り「野に一人いて」は絶品である。このように弾けるのなら、必ずしも歌える必要はないとさえ思える。
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