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2007年1月10日 (水)

sempre piu f e poco stringendo

「永遠の愛」op43-1の61小節目に出現するブラームス生涯で唯一の指定。

この作品は「夜の描写」「男の弱気」「健気な女」とでも名付け得る3つの部分からなっている。「僕のために辱めを受けるならば別れよう」と切り出した男が、「雨や風とともに別れよう」と畳み掛けるところに相当する。

歌詞の内容の消化が完璧だ。「男の弱気」の部分冒頭45小節目からピアノ伴奏に三連符が現れる。拍頭に打ち鳴らされる「嬰ヘ音」が打ち付ける雨の描写なのだろう。問題の61小節目、歌詞に「風と雨」が現れるところになると「嬰ヘ音」は4度上の「ロ音」へと高められ風雨の激しさを表す。まさにこの場所に「sempre piu f e poco stringendo」が配されている。

「常に今までより強く、かつ少し差し迫って」と訳せば試験での得点にはなると思われるが、その程度では伝わらない。曲の最終節で「女の健気」が際立つためには、この部分「男の絶望」が深ければ深いほどいい。シェークスピアあたりならば「一緒に死のう」くらいの展開だってあり得る状況なのだ。

「居ても立っても居られず」あるいは「矢も盾もたまらず」くらいの思い入れは是非とも持っておきたいところである。ではあるが、事ここに至ってもなお「stringendo」を単独で使用せずに「poco」を挟み込むところが ブラームスの真骨頂だろう。絶望と健気の落差が大きいほど良いとはいえ、それが女の側から男への「説教」に聞こえては元も子もないという落としどころの微妙さが反映していると見たい。

それにしても、曲も聴かせず、譜例も無しでこのノリを説明するのは骨が折れる。屁理屈は邪魔でさえある。聴かねば何も伝わらないというのが実態だ。

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コメント

<けいまま様

かれこれ3年前の譜例なしの無理目記事に、血も涙もあるコメントを頂戴して舞い上がっております。貴女様はひょっとして歌い手さんでいらっしゃいますか。

そんなことより、最初から読んでらっしゃるとは無謀な!あまり根をお詰めにならずに、まったりとお楽しみくださいませ。いつでもお待ち申し上げております。

アルトのパパ様

ブログの最初から読みすすめて来て、やっとここまで来ました

この曲、以前から娘の語りの入りが今一難しく感じていましたが
彼の不安や恐れの気持ちを受けて、なだめるように入っていけば良いのですね

積んであった宿題のヒントを頂いたような気分です
ありがとうございました

<Claris様

恐れ入ります。とても心強いリアクションです。
無謀な記事も少しは報われます。

このような説明を読むと・・・・・
この曲を知らなければ聴いてみたくなりますし、
知っていても、あらためて聴いてみたくなります♪

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