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2007年2月 4日 (日)

ドローの法則

生物学用語。特に古生物の分類学で威力を発揮しているという。「一度退化した機能・器官は、その動物の子孫の系統上では絶対に再発生しない」というものだ。

たとえば人間の祖先はサルと同一とされている。先祖には確かに尻尾があったが、人類は進化の過程のどこかで尻尾が退化してしまっている。するとこの先人類の子孫には尻尾が再度発生することはないということだ。この法則は恐竜などの古生物の系統樹を作成するときに威力を発揮するという。

メヌエットを思い出した。ハイドンやモーツアルトあたり、もちろんベートーベンにだって頻繁に出てくるドイツ音楽を代表する舞曲だ。フランスを起原とする4分の3拍子の舞曲は交響曲を始めとするソナタの中間楽章として定着するに及んで全盛期を迎える。ところがベートーベンがスケルツォを考案して風向きが変わる。メヌエットはベートーベンの中期以降すっかりなりを潜めてしまう。何と言ってもベートーベンは交響曲の完成者とされている。特にドイツではベートーベンの交響曲は規範化神格化されていった。そのせいかメヌエットはすっかり退化してしまう。ドローの法則をあてはめるなら、この先交響曲にメヌエットを入れる作曲家は現れないことになる。交響曲を含むソナタでは退化してしまったメヌエットもセレナーデやディヴェルティメントの中では生き延びている。もっともセレナーデやディヴェルティメントというジャンル自体は絶滅危惧種になっているが。

もちろんブラームスも交響曲には一切メヌエットを起用しない。以下がブラームスのメヌエット利用状況である。

  1. 管弦楽のためのセレナーデ第1番op11第4楽章MenuettoⅠ
  2. 管弦楽のためのセレナーデ第1番op11第4楽章MenuettoⅡ
  3. 管弦楽のためのセレナーデ第2番op16第4楽章Quasi menuetto
  4. 四重唱曲op31-1Tempo di menuetto,con moto
  5. チェロソナタ第1番op38第2楽章Allegretto quasi menuetto
  6. 弦楽四重奏曲第2番第3楽章1小節目 Quasi menuetto,moderato
  7. 弦楽四重奏曲第2番第3楽章73小節目 Tempo di menuetto
  8. 弦楽四重奏曲第2番第3楽章123小節目 Tempo di menuetto

上記の1番と2番は面白い。通常なら「Trio」に相当する場所に「MenuettoⅡ」が置かれている。面白がってばかりもいられないことがある。ブラームスが楽譜の上で「Menuetto」と断言しているのは、管弦楽のためのセレナーデ第1番の用例2箇所が最後なのだ。上記の3番以降は注意深く「Menuetto」という断言を避けている。「ほとんどメヌエットで」ないし「メヌエットのテンポで」という表現にとどまっている。「作品自体はメヌエットではないのだけれど、メヌエットのテンポを借りる」というニュアンスが充満している。特に上記5番6番は、ブラームスがソナタにメヌエットを入れにくいという空気を読んでメヌエットと断言することを避けたのではと思えてくる。ドローの法則が生きているようで怖い。

一方、ベートーベンの象徴でもあるスケルツォも創作年代の後ろのほうでは明記されなくなる。特に弦楽四重奏曲や交響曲というベートーベンのホームグランドではスケルツォの表示はおろか使用自体が避けられている。

メヌエットと違ってスケルツォはブラームス以降の交響曲にも出現するから交響曲の系統樹はブラームスを境に「スケルツォ不使用派」が派生していることになる。もしもスケルツォが交響曲上で退化したのなら、ブラームス以降の交響曲にスケルツォが現れることはないからだ。同時に今後ブラームスの系統樹を引き継ぐ作曲家は交響曲にスケルツォを用いないハズである。あるいはスケルツォ不使用派に今後継承者が現れず、進化の袋小路になる可能性も否定できまい。

そんなところで派閥争いをしている暇はない。交響曲自体の命脈が既に尽きている可能性も現実味を帯びている。セレナーデやディヴェルティメントと同様の絶滅危惧種の仲間入りかもしれない。

メヌエットの運命についての生物学的考察だ。本年1月2日の記事「メヌエット」とも関連がある。

http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/01/post_7547.html

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