「dolce」のシャワー
「dolce」は一般的には「優しく」と解されて何の疑問もない。ブラームスの作品中には約1550箇所に現われる。「ブラームスの辞書」では、用例の分析から「espressivo」に次ぐ「主旋律マーカー」第二位と位置付けている他、起用上の特徴として「fとの共存拒否」を上げている。
さらに「dolce」を強調語「molto」で補強したケース「molto dolce」が41箇所存在する。うち33箇所を器楽曲が占めているのが目立つ。初出のピアノ協奏曲第1番第2楽章14小節目から最後の出番はヴィオラソナタ第2番第1楽章158小節目である。「molto」によって強調された「molto dolce」と「espressivo」の関係はなお課題として残る。
「dolce」を「molto」で補強しているだけでも、かなりの決意だということが判る。実は上には上がある。ヴァイオリンソナタ第2番第2楽章の150小節目に「molto dolce」が置かれているが、その1小節後には「sempre piu dolce」が追い討ちをかけている。日本語でいうなら「非常に優しく」の後「つねにもっと優しく」と畳み掛けているというわけだ。
実はこの楽章、ブラームス独特の「緩徐楽章と舞曲楽章の混在」が見られる。ゆったりした「Andante」と「vivace」が下記のように交代する。
- Andante tranquillo 「p dolce」
- Vivace
- Andante 「p」
- Vivace di piu
- Andante 「molto dolce」「sempre piu dolce」
- Vivace
今話題の「molto dolce」「sempre piu dolce」は上記の5番、「Andante」が3度目に現れるところに置かれる。ピアノ伴奏の書法が順を追うように手厚くなるのと平行して、ニュアンス付けが繊細になっている。「いくらdolceでもいいんだよ」というささやきが聞こえてきそうである。ギネスブック風に申せば、ブラームス史上最高の「dolce」という気がする。
ちゃんと弾き分けられているか少し心配である。
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<とらねこ様
すみません!
ディープなネタ連発しておいて、譜例無しですからね。
楽譜ショップと提携せねば。。。。
投稿: アルトのパパ | 2007年3月20日 (火) 07時58分
アルトのパパさんのブログを拝見する度、楽譜を参照したくなりますが、如何せん殆どは遠い実家に・・。かと言って新規に購入は・・・。毎回ジレンマです!
投稿: とらねこ | 2007年3月20日 (火) 06時46分