piu f sempre crescendo
ブラームスの生涯で唯一弦楽六重奏曲第1番の第1楽章234小節目に存在する。ひとまず「今までより強く、常にだんだん強く」と解しておく。
数小節前から微細なクレッシェンドで着々と準備されてきた再現部の到来である。ヴァイオリンがシンコペートされた重音で華麗に装飾しているが、紛れもない第一主題の再現である。この指定「piu f sempre crescendo」は特定のダイナミクスを表現してはいない。「f」の文字は含まれているが、あくまで「piu f」つまり「今までより強く」という相対的な指示にとどまっている。「f」の字面またはあまりのカッコ良さにつられて、強過ぎるダイナミクスにしてしまうと途端に行き詰まる。246小節目の「ff」に向けたクレッシェンドの斜面の途中であることを肝に銘じなければならない。
このように解することで一つの疑問は帳消しになる。この「sempre」は「piu f」と「crescendo」のどちらを修飾しているかという疑問だ。どちらと捉えても「どの瞬間をとっても常にクレッシェンド」という解釈となる。第一主題の再現自体が長いクレッシェンドの斜面に埋め込まれているということを演奏者に知らしめる効果という点では同等と思われる。234小節からいきなり気合いを入れ過ぎるなという警告も含まれていると考えたい。もちろん、この素晴らしい再現を屁理屈で台無しにしないことが大切である。
何やらポカポカと暖かい南向きの斜面のような気がする。
« ハンドルネームの由来 | トップページ | 弓購入一ヶ月 »
<Claris様
ハイ。まさしく上り坂でございます。
投稿: アルトのパパ | 2007年3月16日 (金) 19時29分
ポカポカと暖かい南向きの斜面を、
ゆっくりと滑っているような気分になりました♪
下るというよりは、上っているような?
投稿: Claris | 2007年3月16日 (金) 18時01分