46の和音
「しろくのわおん」と読む。
昔むかし、バロック時代。通奏低音と呼ばれる役割があった。チェンバロやクラヴィーアがその役割を担っていた。それらの楽器の左手の譜面には単音が記されて、その横に小さな字で数字が添えられている。演奏者は記された音とその数字だけを見て、即興で演奏することが当たり前だった。今その詳細を論じる余裕も知識もないが、「46の和音」という呼び名はこのような背景を持っている。
「記された音から数えて4つめと6つめの音を加えた和音」という意味。仮にCdurの主和音を例に取る。基本形は低い方から「CEG」なのだが、これが形を変えることがある。「C」が最高音になる「EGC」を第一展開形、さらにEが最高音になると「GCE」となりこれを第二展開形という。この第二展開形は最低音「G」とその4度上、6度上の音から構成されているので、これが「46の和音」と通称されているのだ。つまり「和音の第二展開形」のことだ。
ブラームスが「46の和音」について考えを述べたという証言がある。音楽之友社から出ている「ブラームス回想録集」第三巻233ページだ。作曲についての唯一の弟子とされるグスタフ・イエンナーの証言である。
「自作が出来たら、その中の46の和音を全部抜き出してアンダーラインを引いてみろ」というブラームスの忠告に言及している。「それらが全て必然としてそこにあるかをチェックせよ」と続く。「46の和音は霊感の枯渇を象徴している」「表面上は耳に優しく響くから、考えに詰まったとき、安易にこの和音に逃げ込むことが多い」と喝破している。当のブラームス自身も乱発を指摘された経験もあるという。
指摘された当のイエンナーは、この方法が大変有効だと認めている。
無論「46の和音」自体に罪がある訳ではないが、個々の和音に対するブラームスの鋭敏な感覚が読み取れていて貴重だ。
今日は4月6日である。
<rainy様
おバカな記事にオタクなリアクションで嬉しく思います。
試験となると気楽には行きませぬ。
必然として使われる場合までは、叱っていないンだと思いますが、必然かどうかの判断のほうが難しいッス。
>「もっと簡単に済ませないでじっくり考えろ」って言いたかったんでしょうか?
一理あります。自然な解釈ですね。
最近歳とったせいか逆に考えています。
「いじくり回さずにシンプルにせよ」の意味かもしれませぬ。
投稿: アルトのパパ | 2007年4月10日 (火) 16時08分
46の和音・・・初めて聞きました。
今度受ける試験にもコード伴奏があるのですが私は第一展開形を考えるのにも数秒かかるほどです・・・
安易に使いたい音なのにブラームスは厳しいですね、合わない音を入れてもしっくりこないし合う音の使いすぎもダメ。
「もっと簡単に済ませないでじっくり考えろ」って言いたかったんでしょうか?
厳しいながらもお弟子さんへの愛を感じます。
投稿: rainy | 2007年4月10日 (火) 11時13分