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2007年4月10日 (火)

衝突

半音関係にある音が同時に鳴らされること。必ずしも打鍵または発音が同時である必要はない。既に鳴っている音と半音関係にある音が後から発音される場合も含まれる。またどちらかの音がオクターブ移動された7度または9度のケースも含まれる。

実際に鳴らしてみると判るが独特な響きがある。ピアノの白鍵でいうなら「ミとファ」または「シとド」である。どちらかというと不快な響きだとされている。オクターブ移動された7度や9度になるとこの不快さも少し減じられる。

作曲家によってはこの「不快さ」を巧妙に利用する。お汁粉に塩を一振りするようなものである。大抵は経過音と言う名の通り一瞬通過する程度、かする程度なのだが、それだけに決め損なうとカッコがつかない。ブラームスにも山ほどある実例の中から、お気に入りを紹介する。

  1. ピアノ協奏曲第1番第1楽章125小節目6拍目のピアノ 右手がGのオクターブを奏しているが、同時に左手は右手側の低いGの半音上のGisを弾いている。8分音符一個分なので一瞬である。文字通り「かする程度」である。気合いを入れて聴いていないと判らぬまま通り過ぎてしまう。
  2. ピアノソナタ第2番第3楽章66小節目 トリオ末尾のスケルツォ復帰の準備の中で起きる。ここからしばらくGとFisの衝突が執拗に繰り返されてスケルツォに回帰する。衝突の解消と同時にスケルツォに回帰するという緻密な作りになっている。「きつい響き」をうまく利用している例である。
  3. 弦楽四重奏曲第3番第3楽章325小節目のヴィオラ 最後から3小節前での出来事だ。C線上1の指でとるDとG線上3の指でとるCisの7度の重音である。これが単純に2小節引き延ばされた後、Dの重音に解決して曲が結ばれる。問題の2小節間は7度なので不快さはさほどでもないが、個人で練習していてもよくわからない。この場所、チェロと第一ヴァイオリンはともにD音を出している。風変わりなのは第二ヴァイオリンでGとBの重音なのだ。決まったときの爽快さは何にも代え難いが、なかなか決まってくれない。第3楽章のしめくくりだけに無様なまねは御法度である。
  4. インテルメッツォホ長調op116-6 冒頭2拍目のHとHisの7度。本作品にあってこの7度衝突は明らかに主要なモチーフのとして扱われている。2小節後にはAとGisの7度衝突が見られる他、次々とこの手の衝突が現れる。この衝突が旋律の流れの推進役ではないかとさえ感じさせる配置である。衝突という言葉が不適切と感じられるくらいのやわらかなインテルメッツォだ。
  5. 交響曲第1番第4楽章77小節目のヴァイオリンとヴィオラ いわゆる「歓喜の歌」に似た第一主題の中である。ヴィオラがC線上のEを奏する。このときオクターブ上で第1ヴァイオリンもEを弾いている。1拍後、ヴァイオリンがEにとどまる中ヴィオラだけが半音上のFに移る。これでEとFが衝突することになるが、全ては一瞬で通り過ぎる。1小節後にはヴァイオリンが「DC」と進行するので衝突はたったの1拍分に過ぎない。この場所ヴィオラ弾きのお楽しみだ。衝突と言うにはあまりに甘美である。
  6. ラプソディー変ホ長調op119-4の5小節目 EsとDがぶつかっている。1つ前の拍から続く「Es-D-C-B」という下降線が、Esのオクターブで確保される保続音と衝突しているのだ。4つの4分音符に付与されたアクセントがそれを裏付けている。

この種の衝突を全部拾うなどということは、諦めてはいるが、思いつくままに列挙した。譜例なしはキツイものがある。

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コメント

<rainy様

>私もいつか「この7度はスパイスが効いてていいねえ~」なんて言ってみたいものです

その日に備えておいしい場所を発掘しておかねばなりません。

勉強になります☆
残念ながら譜面も音源も持ってないものは確認できませんでしたが「お~あったぞ~」と一人つぶやきながら見ていました。
確かに離れた7度や9度は「大人っぽい」感じの不協和音ですね。
隣同士の音の和音は、現代の子供用の曲集では「自動車のクラクション」的な音で使われていてこれはこれで面白いです。
私もいつか「この7度はスパイスが効いてていいねえ~」なんて言ってみたいものです(>_<)

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