perdendo考
「perdendo」は一般に「遅くしながら消え入るように」と解される。「遅くしながら」は誤解の発生する余地は少ないが「消え入るように」は曲者だ。「消え入るように」をひとまずダイナミクスのことだと考えておくが、議論の余地はある。
ブラームスには単独使用例が3回ある。同等の意味と解される「perdendosi」を加えると合計10回になる。この10回の用例を調べると奇妙なことが判る。初期作品「管弦楽のためのセレーナーデ第1番」の2回をのぞき10回のうち8回までが、「a tempo」等のテンポリセット系の用語を伴っていないのだ。誤解の発生がより少ないと申し上げた「遅くする」の側の方が厄介である。
消え入る方はともかく遅くする方をブラームスが意識していたか疑問である。実演奏上の処理としては、結果としてテンポダウンを採用することもあると思うが、テンポダウンを直接意図した用語ではない可能性をいつも頭に置いて臨みたい。一方で「消え入る」という概念の中に既に「遅くする」の概念が組み込み済みであった可能性もあり、予断を許さない。
どこにあるかは内緒である。
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