譜読み
作品演奏の準備の諸段階のうちの一つと位置付け得る。楽譜を楽音に転写する際の自分なりの方針を楽譜を追いながら確認し定着して行く作業。多くは個人練習の中で行われる。「譜読みが速い」「譜読みが甘い」「譜読みが得意」などという使われ方をする。暗譜に到達する長い道のりの第一歩である。演奏家本人の音楽体験を総動員して行われるべきだと考えている。
弦楽器奏者で言うなら、音の高さの確認、ポジション、フィンガリング、弓の返し、弓の使い場所、弓の使う量、音色、アーティキュレーション、テンポ感などを確定させておくことを意味する。ピアニストならばペダリング、声楽家ならばブレスや歌詞の理解は、はずせぬところだろう。当然のことながら楽譜上の音楽用語全ての意味を知っておくことまでもが譜読みの中に含まれる。演奏上の難所や、聴かせどころをあらかじめ把握しておくという側面も小さくない。作曲家が楽譜上に置いた音楽用語の多くは、この譜読みの作業の際にもっとも意味を持つと感じている。
ブラームスの作品において、この譜読みは際限がない。演奏することと同等の喜びを譜読みが与えてくれる。
実を言うと私の著書「ブラームスの辞書」は、演奏者にとっての「譜読みの友」になることを夢見て執筆したと申し上げても過言ではない。
最悪音を出さずとも出来てしまうところが「譜読み」の長所だ。夜中でも家族や近所に迷惑がかからない。音さえ出さねばこっちのものだ。音程不安や、指回し不安もどこ吹く風である。せめて譜読みくらいは世界一を目指したいものだ。
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コメント
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<もこ様
ありがとうございます。少々誉め過ぎの気もします。
実際の音出しより大事とまで申し上げる気はありませんが、私にとっては同等です。音が無いからこそ、テクの不足も足かせになりません。
ブラームス好きですから。
投稿: アルトのパパ | 2007年5月 5日 (土) 19時43分
音無しの譜読みは大切ですね。
アルトのパパさまは、プロ並みの譜読み術ですね。
なかなか、そこまで出来る人は少ないのですよ。
生徒たちに読ませたいです。
投稿: もこ | 2007年5月 5日 (土) 19時37分
<ゆかり様
恐れ入ります。
楽譜を書物と見れば、確かにある種のベストセラーかもしれません。バカ売れはありませんが、内容が変わらぬまま長く売れます。
投稿: アルトのパパ | 2007年5月 5日 (土) 08時10分
楽譜は音楽の設計図のようです。
楽譜・・・実はベストセラー?
その譜面から、より多くを読み取るアルトのパパさん。
いつも心底恐れ入っております。
投稿: ゆかり | 2007年5月 5日 (土) 00時17分