第二主題
楽曲中で提示される2つめの主題。こういう言い回しをするからには当然、これに先行する主題、つまり第一主題が存在することが前提である。器楽それもソナタ形式の楽章で用いられる場合が多い。その場合には第一主題との性格的な対比が珍重される。
6月13日の記事「のだめの中のブラームス【26】」で、コミック「のだめカンタービレ」第18巻にはブラームスネタがなかったと断言した。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/06/26_f76f.html
断言はしたものの、ずっと気になっていた。コミック「のだめカンタービレ」第18巻61ページを見て欲しい。lesson103の冒頭である。孫Ruiちゃんがアナリーゼの授業に臨むシーンである。
孫Ruiちゃんのセリフに第一主題云々とある。誰かのソナタ楽章を題材にしていることは明らかだ。ただしコミックに描かれた範囲ではピアノソナタと断言は出来ない。2コマ目で孫Ruiが冷静に分析している内容が的外れでないことは次のコマの教師の反応から明らかである。彼女の分析に従えば、この教材は相当に念入りな主題処理が巧妙に仕組まれていると見ていい。これがブラームスの作品でないことを証明しない限り、第18巻にブラームスが存在しないとは言い切れないのだ。
彼女と教師のやりとりから以下の条件が導き出される。
- 第一主題は動機aと動機bに分かれる。但し動機c以下の存在することを妨げない。
- 第一主題中に「f」の場所がある。
- まさにその「f」の場所の2小節の間の低音の音形が展開部で用いられる。
- しかもそれは動機aと動機bに密接に関係している。
- 第二主題は属短調で現れる。(主調の5度上の短調か)
- しかも属短調の第二主題が彼の常套手段になっている。
ソナタ形式の第二主題が属短調であることが重要なキーになっている。ブラームスの残したソナタ楽章でこの条件を満たしているのは以下の6例である。
- ピアノソナタ第2番 嬰ヘ短調→嬰ハ短調
- チェロソナタ第1番 ホ短調→ロ短調
- クラリネットソナタ第1番 ヘ短調→ハ短調
- ホルン三重奏曲番 変ホ長調→変ロ短調
- ピアノ四重奏曲第1番 ト短調→ニ短調
- 交響曲第4番 ホ短調→ロ短調
意外なことにピアノソナタ第2番はその第一主題中に「f」の領域が現れないから脱落だ。動機aと動機bの手がかりが少なくてこれ以上は絞り込めない。ブラームスのソナタ全35曲のうち第二主題が属短調になるのが6例ということは約6分の1だが、それを称して「常套手段」といえるかどうかが最後の手がかりかもしれない。
はっきりしないと気持ちが悪い。この話を「のだめの中のブラームス」とタイトリング出来ないのだ。
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