真裏の調
日本から見て地球の真裏にあるのは南米だ。西回り東回り北回り南回りどんな行き方をしても同程度の時間と手間がかかる。
たとえばハ長調から見て一番遠い調は何だろう。時間や距離が測れる訳ではないから少し思案が必要になる。半音高い嬰ハ長調が真っ先に思い浮かぶ。シャープは7つが必要で、全ての音に付与される。一応の候補だが、これを変ニ長調と捉えるとフラットは5個で済む。つまりシャープ系をたどるよりもフラット系を辿った方が近い。同様に半音下の変ハ長調は、フラット系を辿れば7個だが、ロ長調と考えてシャープ系を辿れば5個でよい。
この論法で言うならシャープ系を遡ろうとも、フラット系を辿ろうとも6個が必要になる嬰ヘ長調つまり変ト長調が最も遠いということになる。CとFisだ。この音程関係は増4度または減5度と呼ばれる。ピアノの白鍵だけでいうなら「ファとシ」である。長音階の中でこの音程を構成するのは「ファとシ」だけである。古来「悪魔の音程」と考えれてきた独特な響きを意図的に使うこともある。ウエストサイドストーリーは全編この音程で溢れている。
CとFisで思い出すこと、それはクララ・シューマンだ。Cmollハ短調とFismoll嬰へ短調は、ブラームスにとってどちらもクララの象徴であった可能性が高い。
<ハ短調>
- C-Es音程はCSつまりクララ・シューマンの頭文字の暗示だ。
- ハ短調のソナタは4曲。最初の3曲は着手から完成に長い時間を要した。
<嬰へ短調>
- クララに捧げられた作品は2つピアノソナタ第2番と「シューマンの主題による変奏曲」はともに嬰へ短調だ。
- クララの息子フェリックスの詩につけた曲は3曲中2つが嬰ヘ長調だ。
ハ短調がフラット3つなら、嬰へ短調はシャープが3つであり、きれいなシンメトリーが成り立っている。協和音程から程遠い2つの音CとFisがクララを象徴しているというのは、何かと暗示的でさえある。
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