民謡の収集
作品番号無き作品WoOの31から38にわたって約160曲ものドイツ民謡が残されている。31から33までが独唱用で、34から38までが合唱用だ。独唱用と合唱用で重複する曲もあるが、160曲というのは大した量である。作品番号が付与され一般にリートと分類されている独唱歌曲でさえ200曲程度だから、ジャンルとしての民謡は無視できない勢力になっている。その意味で1月12日の「カテゴリー民謡の創設」は遅きに失したと申し上げて良い。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/01/post_4f9e.html
ブラームスの実直さから推定して、作品番号を付与した作品は自分の創作で、作品番号を付与せずに民謡集に収録された作品は、ブラームスがフィールドワークを通して拾い集めたものと断ずることが出来よう。「民謡の収集」である。
民衆の間で歌われていたもの、もちろん民謡集の形で出版されていたものもあるだろう。録音技術のなかった時代、「民謡の収集」とは口で言うほど簡単ではなかったと思われる。ブラームスが演奏活動のために欧州中を旅した過程で耳にした民謡を、五線に書き留めた作品もあったに違いない。ブラームスのことだから、旋律を聴いて即座に五線紙に書き留めることなど造作もないことだったと思われる。それどころか、彼の頭の中にはベースラインさえ同時にひらめいていたことは確実である。そしてシンプルで気の利いた和声を施したピアノ伴奏を加えた。
その成果を自作とは完全かつ明白に区別する形で、つまり「民謡」を出版したことはもっともっと注目されていいと思う。実際に収集された民謡の数は出版された数より相当多かったとも思われる。こうして放置すれば消え去って行きかねない民謡は、ブラームスの手で永遠の命を得た。WoO33の「49のドイツ民謡」は1894年の出版だ。ブラームスが自らの創作活動の集大成と考えていたことはほぼ確実である。
私がブラームスを深く深く愛する理由の一つをこの周辺に求めることも出来る。
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