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2007年10月13日 (土)

仲直りの切り札

クララとブラームスのつきあいは、ヨハネス・ブラームスのシューマン家訪問から、クララ自身の死まで総延長43年にも及ぶ。基本的な部分で意気投合出来ていた2人ではあるけれども、不和に陥った時期もあった。

ロベルト・シューマンの作品出版をきっかけに生じた行き違いは、とりわけ深刻だった。約1年実質上の絶交状態だったという。初老にさしかかっていたブラームス、楽壇の大御所となっていたブラームスだけれどもクララとの1年に及ぶ絶交状態は相当堪えたと思われる。クララの怒りは深く、この溝は解消不能にも思えるほどだった。

耐えられなかったのは、もちろんブラームスの側だ。絶交状態の解消に一計を案じた。ブラームス自身に「仲直りの切り札」という意識があったかどうかは定かではないが、後世の愛好家の目から見れば、起死回生の策に見える。1892年のクララの誕生日に作品118のピアノ小品6曲を添えて、許しを請うたのだ。

結果は吉と出る。「あなたの贈ってくれた作品に免じて元の鞘に収めましょう」というクララの返事がブラームスを驚喜させたことは想像に難くない。

これでも許さぬようだったら、クララ株は大暴落だ。世界遺産級の珠玉の作品と引き替えに許せぬ怒りなどあるはずもない。クララだっておそらく仲直りの機会を伺っていたと思う。「贈られた作品に免じて」という言い回しのチャンスをクララに与えたと解したい。

我々愛好家はその切り札「6つのピアノ小品」op118を知っている。6つの作品の調性を順に並べると、クララのテーマが草書体で現れることも知っている。そして何よりも理屈の要らぬ程の作品の美しさを愛している。だからこそ「作品に免じて許す」という行為に、説得力が宿るのだ。クララの面子も保てるではないか。

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コメント

<ひふみ様

恐れ入ります。

誉め過ぎです。

そのうち木にも登ってご覧に入れます。

>6つの作品の調性を順に並べると、クララのテーマが草書体で現れることも知っている。

秋ですねえ~。
アルトのパパさんの文章もとっても文学的な香りが致します♪

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