露払い
横綱の従者2人のうち先導役を努める力士のこと。後ろに従うのは太刀持ちだ。
「露払い」という言葉を聞いて何故か思い出すのが、インテルメッツォop118-1だ。この曲調のどこがインテルメッツォなのか古来憶測を呼んでいる。以下に作品118の6曲を列挙する。
- インテルメッツォ イ短調 Allegro non assai,ma molto appassionato
- インテルメッツォ イ長調 Andante teneramente
- バラード ト短調 Allegro energico
- インテルメッツォ ヘ短調 Allegretto un poco agitato
- ロマンス ヘ長調 Andante
- インテルメッツォ 変ホ短調 Andante,largo e mesto
調性を順に並べるとイ短調→イ長調→ト短調→ヘ短調→ヘ長調→変ホ短調となっている。「A-G-F-Es」だ。クララのモチーフ「A-Gis-Fis-E」と似ている。10月13日の記事「仲直りの切り札」の中でこのことを指して「クララのモチーフの草書体」と称している。
このことは1番2番を一組、4番5番を一組と考えることを示唆する。つまり長短の同主調どうしをペアだと解釈するのだ。1番と4番は、2番と5番それぞれの「露払い」だというわけだ。作品118の6曲をこうして眺めると4曲となり、4つ全てが短調で立ち上がることになる。
「露払い」である1番と4番は短調でありながら、曲の末尾では長調に転じている。続く作品の冒頭の呼び水になっている。
特にイ短調と呼びならわされている1番は、調が曖昧だ。イ短調の主和音がかなり意図的に避けられている。その曖昧さを味わう音楽であることは間違いない。そしてその最後の和音はCに付与される臨時記号によってイ長調に転ずる。最高音に第3音のC♯を頂く終止和音は、続く2番イ長調Andante teneramente の冒頭を雄弁に予告してはいまいか。Andante teneramenteの2番冒頭と酷似した終止和音、この澄み切った和音を最後に鳴らすことが1番イ短調の目的という気さえしてしまう。荒れ狂った風雨の最後の一滴のようなキラリ感である。これに台風一過のAndante teneramente が必然として続くのだ。
作品118-2は、私にとって別格のインテルメッツォだ。だから1番イ短調のインテルメッツォにはこの2番のための「露払い」機能を想像してしまう。
して見ると3番ト短調は「太刀持ち」かもしれない。
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コメント
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↓↓訂正
大変申し訳ありません。私のコメントの中の116-2、116-1はそれぞれ118-2、118-1の誤りです。
混乱させてしまってすみませんでした。
投稿: インテルメッツォ | 2007年10月16日 (火) 07時01分
<インテルメッツォ様
私のは単なる思い付きです。
op116については、またいずれ記事にしたいと思います。
投稿: アルトのパパ | 2007年10月15日 (月) 23時49分
6つの小品が実は4つの小品・・・ですか、なるほど。
私も116-2は大好きなのですが、確かにこれを116-1とセットで聴くと良さが際立つように感じます。
投稿: インテルメッツォ | 2007年10月15日 (月) 19時54分