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2007年10月27日 (土)

根音省略

話を判りやすくするためにハ長調を例にとる。ハ長調の主和音といえば「C-E-G」である。いわゆる「ドミソ」だ。この3つの音の内「C」が第一音あるいは主音と呼ばれる一方で「根音」と呼ばれている。「第一音」「主音」「根音」どれをとってもいかにも大切そうな感じがする。

詳しいことは私の手には余るがもう少し続ける。声部の数の都合で、これらの音のうちどれかを重複せねばならなくなった時、もっとも無難とされているのが「根音」の重複だ。ちなみに一番いけないのが「第3音」の重複だそうだ。「E」である。逆に何かの都合でどれかを省略せねばならなくなったときは「第5音」(G)の省略が無難らしい。第3音の省略をすると長調なのか短調なのか判らなくなるし、根音の省略は何調か判らなくなるからだ。

無難とは言えないが根音が省略されることもある。それが本日のお題「根音省略」だ。ブラームスの和音遣いの特色としてあげられていることもある。曖昧を自在にもてあそぶブラームスにとっては、「何調か判らなくなる」というリスクはかえって強力な表現のツールになる。昨年9月21日の記事「曖昧を味わう」でも述べた通りである。それどころかその記事で言及した「まどろみはいよいよ浅く」の冒頭こそが「根音省略」の例にもなっている。

さらに属7和音で根音省略が起きるとどうなるか。コードネームでいう「G7」を例に考えてみる。「G-H-D-F」だ。ハ長調のトニカ「C-E-G」に行きたくなる機能を持つのだが、この4つの音から本日話題の根音「G」が省略されると「H-D-F」になる。短3度の堆積した形になる。この3つの音の両端「H」と「F」はいわゆる増4度の音程だ。ピアノの白鍵で増4度を表わすことの出来るのは唯一「HとF」だけだ。

響かぬといえば響かぬのだが、バッハやブラームスにかかると抗し難い魅力を発するスパイスになる。

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