レコードジャケット
中学3年の頃だったと思う。美術の授業の中でレコードジャケットのデザインをした。自分の好きな音楽作品のレコードジャケットをデザインするという代物だった。当時レコードと言えば30cmのLPだったから、レコードジャケットのデザインと言えば30cm四方の紙に各々のアイデアを盛り込むことに他ならない。曲のイメージと演奏家のイメージを加味する他、自分がその曲を好きであることを盛り込むことが大切だ。
当時筋金入りのベートーヴェン少年だった私は当然ベートーヴェンの作品を選んだ。選んだ曲は当時もっともはまっていた曲。弦楽四重奏曲第15番イ短調だった。中学3年の男の子としてはレアだと思う。文字のフォントや配置を工夫した自信作だったのだが、肝心のデザインが抽象画みたいになってしまい先生や仲間の賞賛を得ることは無かった。絵の腕前に問題があることは明らかだったが、理由はそればかりではなかったと思う。
同じベートーヴェンでも「運命」「田園」「英雄」の方が数段楽だったに違いない。弦楽四重奏曲第15番という曲が大好きな気持ちを盛り込めばいいのだが、言うは易しの難題である。詳細をイメ-ジ出来るだけの知識を私以外誰も持っていないから、批判もされない代わりに賛同もされないのだ。
ベートーヴェンの肖像も弦楽四重奏団の絵も不要と思った。ジャケットだから収録されている曲や演奏家についての最低限の情報は盛り込まねばならぬが、それ以外は浮かばなかった。
中学生ながら「絶対音楽」ってそういうものだと感じた。音楽の授業でも学べぬことが美術の時間に痛感出来た。
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