奇数小節フレーズ
ブラームス節の柱の一つ。ブラームスの書く主題は、奇数小節のフレーズから構成されることが多い。
2小節で動機、動機が2つ集まった4小節で小楽節を構成し、さらに小楽節が2つ集まって8小節の大楽節を形成すると、大抵の音楽入門書に書かれている。私も中学時代にそう習った。例外も存在するが18世紀中盤からの100年間、欧州特にドイツ系の音楽にあてはまると補足されている場合もある。
つまりブラームスの創作年代の少なくとも前半は、その100年間にかすっていると言っていい。ドイツ音楽のガチガチの継承者と認められながら、ブラームスは自作の主題に奇数小節フレーズを用いることが無視しえぬ頻度で起きている。
すぐに気付く箇所を試しに列挙してみたい。
- ピアノ四重奏曲第1番第4楽章 3小節フレーズ
- ハイドンの主題による変奏曲冒頭 5小節フレーズ
- 第1交響曲の第3楽章第1主題 5小節フレーズ→7小節フレーズ
- 弦楽四重奏曲第2番第4楽章 3小節フレーズ
- クラリネット五重奏曲第3楽章 5小節フレーズ
このほか晩年のピアノ小品の中にも奇数小節フレーズが溢れている。
他の作曲家の例を良く調べないと「ブラームスの特色だ」などとは断言できないが、ブラームスの魅力の源泉の一つであることは疑い得ない。2-4-8の積み重ねで得られる整然とした形式感を敢えてはずしたフレージングが彼の狙いだと思われる。シンメトリーな美しさを意図的に壊して得られる破調を、表現のツールにしていたものと考えている。奇数が2で割り切れぬことから来る頑固なイメージも想定のうちだろう。
俳句や短歌の達人が、時として意図的な「字余り」で予期せぬ効果を狙うのと同根だと思われる。
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