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2008年1月18日 (金)

移調楽器

オーケストラを構成する管楽器には「移調楽器」と呼ばれる一群が存在する。理屈は難しいのだが、幸い見分け方は簡単だ。総譜を見て、弦楽器と違う調号が付いている楽器が移調楽器である。クラリネット族、ホルン、トランペットがその代表だ。

クラリネットにはA管(アーかん)とB管(ベーかん)の2種類がある。♯も♭付かない調号でドレミファソラシドと吹くとAdurになってしまうのがA管で、同様の条件でBdurになってしまうのがB管だ。楽器に元々♯3個や♭2個が刷り込まれているような感覚である。Cdurの曲を演奏する場合、A管には♭3個を、B管には♯2個を付加することになる。A管はB管より約1cm長いそうだ。

A管B管2種のうちどちらを使うかは大抵作曲家が指示する。演奏家はその指示に従って持ち替えるという訳だ。

作曲家がA管B管のどちらを指定するかについての基準はあったのだろうか?考えられる基準を以下に列挙する。

  1. 「シャープ系の調の曲はA管、フラット系の調の曲はB管」演奏が楽になる。
  2. 「曲想が渋目、しっとり目はA管、華麗系はB管」曲想と音色がマッチする。

上記の併用もある。クラリネットが主役を張る曲では、使いたい管種に合わせて調性が選択されていた可能性も高い。ブラームスのホルン三重奏曲にはホルンにEs管の指定がある。同三重奏曲の調性は第1楽章から順にEsdur、Esdur、Esmoll、Esdurだ。Es管のホルンに配慮した疑いがある。

1番の基準はとても明快だが、曲の途中での持ち替えも頻繁になる他、ハ長調、ヘ長調あるいはト長調あたりは悩ましい。2番の基準は判ったようで判らない。「音色と曲想のマッチ」と言われても実は、判断基準が曖昧である。

そこでブログ「ブラームスの辞書」名物の実地検証を試みた。ブラームス作品でクラリネットに出番がある作品64曲についてA管B管どちらが使われているかを検証した。楽章で1曲とカウントした。一応クラリネットが降り番の第1曲を除くドイツレクイエムもカウントの対象とした。

対象64曲で弦楽器に対する調号の合計は133個である。ト長調は♯1個なので1。ヘ長調も♭1個なので1だ。ハ長調とイ短調はゼロ。ロ長調だと5になる。133というのはこうしてカウントした数の合計だ。対象曲に対してクラリネットに与えられた調号は81となった。このことは上記の仮定1番を裏付けている。クラリネットの管種は調号が少なくなるように選ばれている。原曲より調号が増えてしまうのは、以下の通りだ。

  1. 管弦楽のためのセレナーデ第1番第4楽章ト長調のB管(♯3個)
  2. 管弦楽のためのセレナーデ第2番第3楽章イ短調のB管(♯2個)
  3. ドイツレクイエム第5曲ト長調のB管(♯3個)
  4. 交響曲第2番第3楽章ト長調のA管(♭2個)
  5. 交響曲第3番第2楽章ハ長調のB管(♯2個)
  6. 交響曲第4番第1楽章ホ短調のA管(♭2個)
  7. 交響曲第4番第4楽章ホ短調のA管(♭2個)
  8. 二重協奏曲第1楽章イ短調のA管(♭3個)
  9. クラリネット三重奏曲第1楽章イ短調のA管(♭3個)
  10. クラリネット三重奏曲第4楽章イ短調のA管(♭3個)

思った通り「♯1個」か「♯♭無し」の調に集中している。

ドイツレクイエムは面白い。ニ短調の第3曲とハ短調の第6曲では、平行長調のニ長調やハ長調に合わせて調号を設定し、実処理は臨時記号で逃げることで調号増を抑制している。

創作史の前半、第1交響曲までは、多楽章曲の同一曲中で必ずA管B管の持ち替えが発生している。逆に第2交響曲以降は、同一曲中での持ち替えがヴァイオリン協奏曲を例外として発生していない。

面白いことはまだある。管弦楽のためのセレナーデ第3楽章、交響曲第4番第3楽章、二重協奏曲第3楽章の3箇所において、なんとクラリネットinCで書かれている。昔はC管のクラリネットがあったのか、AでもBでも可能の意味なのか判然としない。64曲からこの3曲を除いた61曲の内訳はA管29曲に対してB管が32曲だ。数も拮抗している上に時期的な偏在や長調短調に起因する偏りも見られない。

最晩年のクラリネット入り室内楽に目を移す。三重奏曲と五重奏曲はA管、ソナタはB管になっている。リヒャルト・ミュールフェルトは両方持っていたようだ。

最近最大の疑問は、例によってコミック「のだめカンタービレ」だ。単行本12巻の表紙に描かれたクラリネットはA管だろうかB管だろうか。

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コメント

<GLGR様

いらっしゃいませ。

C管がありましたか!!そりゃそうですよね。無かったら指定しないでしょうから。

これでもしH管があったら、「BACH」が完成しますね。

ちらかっていますが、いつでもお越しください。

はじめまして。
いつも楽しみに読ませてもらってます。

当時、C管クラリネットは存在していたようです。スコアの指定がやたら細かいマーラーの楽譜にも、あえて楽章中で1人だけC管に持ち替えさせている箇所がありました。ベートーヴェンなど18・19世紀の他の作曲家もたまに指定しています。ブラ4第3楽章のような明るい曲調で使われるように思います。

他の管と音色を比較した批評文も残っているので実際に使われていたのでしょう。C管の音色を実際に聴いたことはありませんが、B管よりも明るくて少し甲高い音色だそうです。最近数社から復刻され始めてます。

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