改訂の方向性
ブラームスは、作曲過程の物証を残さなかったことにおいては出色の存在だ。未完の楽譜やスケッチ帳の処分が完璧だった。完成した作品の改訂は数少ない。
- 歌曲「愛と春Ⅰ」op3-1
- ピアノ三重奏曲第1番op8
- 交響曲第1番op68
上記のうち3番目の第1交響曲は、初演後出版前の改訂だ。上記の改訂に共通するのは、規模の縮小だ。1と2には用語の簡素化も観察出来る。
もちろん作曲の過程では、加筆、削除の両方が行われたことは確実だが、一旦形になった後の改訂においては、規模の縮小が主たる目的であったと想像する。作曲の過程で推敲が不十分であったと後に認めた作品だけが改訂を施されたと解したい。それは大抵縮小だ。上記の通り実例が極端に少ないので、断言はいささか後ろめたいが、そんな気がする。
音一個で足りるところに複数の音を書いてしまったことが改訂を思い立たせる要因になっているようなイメージだ。こうした姿勢は、作品のみにとどまらずに、編曲や演奏にも反映していたと思われる。
« カデンツァもどき | トップページ | バッハのアンダンテ »
コメント