13のカノン
ブラームスの晩年を著述した書物ではたびたび言及されていることがある。作品111の弦楽五重奏曲第2番の完成後、創作力の衰えを感じたために、以後作曲するまいとブラームスが決意した話だ。
もう作曲はやめて古い作品の整理や推敲に徹する決意をしたという。その決意によっていくつかの古い作品が整理推敲されたのだとは思うが、その結果出版に結びついたケースは少ない。WoO33を背負った名高い民謡集もその一つだ。
これが作品番号有りの作品となると、該当する作品はおそらく「女声合唱のための13のカノン」op113だけだ。作品に含まれる13曲は全て1859年からの約10年の間に作曲されている。今日のような静かに雪の降る午後に、ピタリとはまり込む清らかなアカペラの女声合唱だ。民謡に題材を求めながら、カノンの装いを巧みに付加している。4番の子守唄はWoO31「子供のための民謡」の11番と同じ旋律、同じテキストだ。つまり、過去に書き溜めた作品からお気に入りを取り繕ってカノンに仕立てたという性格を帯びている。自らの音楽を世に問う野心のこもった作品ではない。最晩年の珠玉のピアノ曲集、一連のクラリネット室内楽、「4つの厳粛な歌」、そしてコラール前奏曲を発表する前の露払いにも見える。
全体の曲数が13で、作品番号が113というのは、はたして偶然だろうか。ブラームスのいたずらである可能性もあると感じる。
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コメント
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<魔女見習い様
細かいところにお気づきですね。十三回忌のお供物みたいなものです。
計画的ないたずらです。
投稿: アルトのパパ | 2008年2月 3日 (日) 14時49分
こちらの記事も、3日前から「13」が続いていますね。
昨日は、一昨日の記事から思い出されて、かと思ったのですが、
今日もとなると、ね?
投稿: 魔女見習い | 2008年2月 3日 (日) 14時44分