2拍子のスケルツォ
いわゆる多楽章器楽曲のソナタの中に、スケルツォの確固たる居場所を設定したのは、ベートーヴェンだ。犠牲者はメヌエットである。モーツアルトやハイドンに代表されるウイーン古典派の伝統を打ち破ったと見ることが出来る。拍子こそメヌエットと同じ4分の3を採用しながら、テンポがいちぢるしく引き上げられ、最早舞曲としての実用性は棚上げとなった。原義の軽さは薄れひたすらマジになって行く。
ベートーヴェンはその創作の末期になって、今度はとうとう4分の3という拍子も解体の対象にする。交響曲第9番のスケルツォ4分の3拍子の中間部に2分の2拍子が現われる。弦楽四重奏の13番目と14番目に2分の2拍子を採用する。
一方ブラームスも、ソナタの中でスケルツォを用いている。用いてはいるのだがベートーヴェンのホームグランドである交響曲と弦楽四重奏曲にはベートーヴェン型の4分の3拍子のスケルツォが出現しない。舞曲楽章に相当する第3楽章のテンポは原則として遅めである。例外は第4交響曲だ。第3楽章のテンポが唯一アレグロに達する。この楽章は解説書では「事実上のスケルツォ」と位置付けられていることが多い。4分の2拍子のスケルツォである。あくまでもベートーヴェンとは違う道を歩みたいのだと思う。
例によってブラームスが指向したのは、バッハだ。この第4交響曲はバッハへの思いで出来ている。
- 第4楽章のパッサカリア。カンタータ150番の終末合唱のバスが用いられている。
- その第4楽章には、平均律クラヴィーア曲集第一巻の10番BWV855のフーガが一部投影されている。
- 第2楽章は冒頭いきなりファにナチュラルだ。いわゆる「フリギア」っぽく始まる。
これらに加えて「4分の2拍子のスケルツォ」という概念自体が、バッハの投影なのではないかと感じる。パルティータ第3番イ短調BWV827の第6曲だ。これが実に本日話題の「4分の2拍子のスケルツォ」なのだ。16分音符テンコ盛りの曲想がただならぬ関係を思わせる。根拠はないが何となくである。
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