みんなどうしているのだろう
一昨年8月26日の記事「松葉のマーク」に関係がある。作品116-1のカプリチオに松葉のマーク「<>」の特異な用例がある点に言及した。同じ作品116の中の4番のインテルメッツォにも奇妙な用例がある。44小節目、46小節目64小節目、65小節目だ。各々の小節の3拍目の4分音符の下に話題の松葉のマーク「<>」が付与されている。4分音符1個に付いてる。「<>」を「クレッシェンドしてただちにディミヌエンドする」と解する立場からは具合が悪い。4分音符1個ではディミヌエンドはともかくクレッシェンドがどうにもなるまい。ピアノという楽器の特性から一旦発せられた音は減衰するしかないのだから、発音後のクレッシェンドは決定的に困るのだ。左手側をアルペジオ気味に弾くようになっているので、それで何とかクレッシェンドの雰囲気だけを確保出来る可能性は残るが、難儀なことだ。
我が家の楽譜はヘンレ社発行のものだ。素人の私が考え付くようなことはとっくにわかっていて書いているに違いない。インテルメッツォホ長調作品116-4は演奏不能というそしりを受けていないから、みんなこれを何とかしているのだろうと思う。
一昨年8月26日の記事「松葉のマーク」でも述べたように「<>」は、単に物理的な押し引きを求めているのではなく、特定のニュアンスの付与を意図していると考えたほうが何かと辻褄が合う。
そういえばというような話がある。音楽之友社刊行の「ブラ-ムス回想録集」第1巻、クララ・シュ-マンの弟子の一人であるファニ-・デイビスの回想だ。ピアノ三重奏曲第3番の論評の中で、問題の「<>」を指して、「暖かな感情を盛り込みたいときに付与される記号」と記述している。単なるダイナミクスの増減ではないことが伺われる。
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<みーママ様
どげんかせんといけませんね。
投稿: アルトのパパ | 2010年1月28日 (木) 18時02分
けいままさまのコメントを読んでの突然の乱入失礼します。
(けいままさま、はじめまして。HNがよく似てますね。♪)
問題の個所ですが、42小節目や45小節目は同じ音形なのに松葉なし、46小節目は左手のアルペジオマークがないのに松葉あり、ということなので(春秋社版を見ています)物理的にアルペジオ処理でなんとかするということではなさそうです。
この場面、「問いかけ、答え」の繰り返しの「問いかけ」のところだけに松葉がついているので、(特に3回目は2回問いかけが繰り返される)その気持ちを強く込めて弾くということでしょうか。
CDを聞き比べてみたけどやっぱりニュアンスでしか感じとれませんでした(少しテヌート気味にする。バスはじめ左手の音を小さめにしてソプラノを強調して弾く。)
でも、これだけたくさん音があれば、何とでもなりそうです。
ちょっとすぐに具体例を思いつかないんですが、ピアノ曲で、単音一個にこの松葉がついていることは多くあります。
どないせいというのでしょう。
投稿: みーママ | 2010年1月28日 (木) 09時06分
<けいまま様
そうなんですよ。単純な音量の話では無さそうだとしか申し上げようがありません。
投稿: アルトのパパ | 2010年1月28日 (木) 06時25分
アルトのパパ様
文字にして説明するのは難しいのですが
歌うときは、特に短い音の場合は、子音から母音に移ってから(例えばscho-neの場合でしたら、schoのoに入ってから直ぐに)フワッと口を縦に開けそして直ぐに戻す感じで音を膨らませて松葉印をつくるんですが
ピアノの場合、本当にどうするんでしょうね
ぜひぜひ、答が知りたいです
投稿: けいまま | 2010年1月28日 (木) 06時02分
<魔女見習い様
そですねぇ。さらりと書いてあると見落としがちですが、軽視してはいけない気がしています。
投稿: アルトのパパ | 2008年3月 9日 (日) 16時11分
「<>」は、いつも心に持っていたい記号のようにも思います。
投稿: 魔女見習い | 2008年3月 9日 (日) 15時46分