謎のVivace
まずは話をソナタに限定する。交響曲4曲と協奏曲4曲に室内楽24曲、さらにピアノソナタ3曲を加えて35曲ということになる。その上で以下のリストをじっと眺める。
- ピアノ協奏曲第1番op15
- ホルン三重奏曲op40
- 弦楽四重奏曲第3番op67
- ヴァイオリンソナタ第1番op78
これが何を意味しているかスグわかる人とは、是非一献傾けたいものだ。第一楽章が「Allegro」になっていない作品だ。何かにつけ異質なことが多いホルン三重奏曲は、ここでも異例である。第一楽章がソナタ形式になっていない。逆に言うと第一楽章が「Allegro」になっていないことも「ソナタ形式でないからである」とすんなり説明できる。第四楽章にソナタ形式が据えられて、そこにはまばゆいばかりの「Allegro con brio」が置かれているからだ。「ブラームスの辞書」の提案した「Allegroはソナタを指し示す代名詞機能」という仮説を支持補強してくれている。
問題は残る2作。弦楽四重奏曲第3番とヴァイオリンソナタ第1番だ。両者とも第一楽章にソナタ形式の楽曲を配備しながら「Allegro」の表札を掲げていない。前者が「Vivace」で後者が「Vivace ma non troppo」になっている。脱落した「Allegro」の代わりに差し込まれているのが両者とも「Vivace」だというのが全くもって不思議である。ブラダスによればブラームスは生涯で「Vivace」を38箇所で使用しているが、他にチェロソナタ第2番の第一楽章冒頭が「Allegro vivace」になっている。第一楽章冒頭つまり曲頭における「Vivace」使用はこの3例だけだ。
何故この2者では「Allegro」と書かれないのか、そして「Allegro」の代わりの置かれるのが「Vivace」に限られるのか、調性、拍子などに規則性も見当たらず難解という他はない。
単なる気紛れならそれでもOKなのだが。
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