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2008年4月24日 (木)

禁則

一般に「禁則」といえば、「してはならぬこと」と解される。「禁じ手」である。

和声学にも「禁則」という概念がある。「あってはならぬ和声進行」のことだ。「平行5度」「平行8度」という言葉が実はそれにあたる。「和声学」の習得を志す者にとっての一種の鬼門を形成しているとさえ思われる。私とて深入りはとても出来ない。たくさんの種類がある上に例外も多いから、人によっては「あれも出来ぬ、これも出来ぬ」という厄介な制約としか映らない。ひとつだけ忘れてはいけないことがある。こうした禁則は、気紛れに存在している訳ではないということだ。禁則になるかどうかの基準は「そのように進行したら不快だった」という事実の積み重ねだということだ。「不快」の定義は人により時代により変化することもあると思うが、経験則に基づく決まりであることは覚えておきたい。

もっと大切なことがある。これらの禁則を膨大な例外まで含めて完全にマスターし、禁則を全く犯すことなく作曲された音楽が、ただちに名曲かというとそうでもない。おそらく「ルールを完全に守ったつまらぬ曲」が数の上では一番多いのだろうと思う。一方、いわゆる天才作曲家たちの作品の中に、禁則を守っていない部分があることもまた事実である。有名なところでは、バッハだ。ブランデンブルグ協奏曲第5番の第1楽章11小節目、ブランデンブルグ辺境伯に献呈した自筆スコアの段階ではここに平行8度が存在していたという。しかも、元々あった平行5度を修正した結果、平行8度が出来てしまったという曰く付きである。現在市販のスコアでは跡形もなく修正されている。一度修正前の楽譜に基づいた演奏が聴いてみたいものだ。

さてさてブラームスは、古典派の先輩作曲家たちの作品中のこうした「禁則発生箇所」をリスト化していたという。どういう目的なのかは断じかねるが、遊び半分や興味本位ではあるまい。自分の創作活動の一助であることは確実だ。「禁則」の存在自体を容認しながら、その深刻度に差があると感じていたのではないだろうか。深刻度の判定のため、過去の作曲家の作品に現れる禁則箇所を集計分類してた可能性を考えたい。何が何でもダメと決めつけていたら集計などしないはずだ。更に申せば、禁則箇所を1箇所2箇所と数えていただけとも思えない。どのような局面でのどのとようなパート間でどういう種類の禁則が起きていたかを具体的に把握していたと思われる。

エクセルがあったらきっと上手に使いこなしていたと思う。

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コメント

<しつこい作曲家様

おおお。

納得でございます。

授業料をお支払いせねばいけませんね。

ややこしいですが、実音ではホルンの2番の方がファゴットの1番より下なので、起点が減5度で終点が完全5度です。“並行”なので両方が5度でないと並行5度ではないのです(その意味では平行の漢字ほうがふさわしいですね)。ちなみに、終点が減5度の場合はセーフです。長々と失礼いたしました…。

<軽率な作曲家様

おおお。確かに。

終点は「DA」の5度で起点は「CisG」の増4度ですが、やはりアウトでしたか。

説明不足で申しわけありませんでした。
Brahms Sym.2 第1楽章 
Fg.1st 第4小節3拍目のG →第5小節4拍目のA と
Hr.in D 2nd 第4小節1拍目のCis(実音) →第5小節目のD
(実音)の声部間に並行5度ありです。
ホルンはD管なので♯2つ加えてアルト記号にて実音で読めます。

<帰ってきた暇な作曲家様

おぉお。第2交響曲冒頭4小節目から5小節目ですか。ファゴット1番とホルン2番ですとな。

「???」

見つかりませぬ。

ありがとうございます。知識の厚みだなんてとんでもないです。
お察しの通り、和声学における公理にも色々ありまして、お勧めの声部配置、なるべくやらない方が良い配置、そしてやってはならない“禁則”まで様々です。並行(平行…どちらでも可です)5度と並行8度はいずれも禁則なので両者にやばさの位置づけの違いは特に設けられていません。
ブラームスSym.2の1楽章冒頭4-5小節にかけて1番fgと2番Hrが並行5度です。fgが5小節目で和声のセオリー通りfisに下がれば並行にはならないのですが、おそらくブラームスはfisではチェロバスのあの大事な動機を邪魔してしまうと考え、fgをAにあげたのだと思います。
和声の規則に盲従せず柔軟に活用して創作をしている好例だと思います。

<さらに暇な作曲家様

ご丁寧にありがとうございます。ためになります。いつでも歓迎です。その知識の厚み、羨ましい限りです。

オクターブユニゾンがセーフなのは意外ではありません。これがダメだとそこいら中軒並みアウトですから。ブラ1の冒頭の例OKです。

オクターブはそれでOKですが、平行(並行?)5度となるとやばさが一段上の気がしますが、いかがでしょう。

面白いお話は元より、厳しい指摘も歓迎でございます。どうかご遠慮なさらず。

オクターブユニゾンは全部セーフです。和声で禁じられるのは、異なる“声部”間における並行8度なので異なる“楽器”間ではないからです。
おおまかにいって基本的に作曲家はオーケストレーションをする前に声部をまず書き上げます。したがって禁則のチェックをいれるのはこの時です。自分の和声的指針に従って完璧な声部配置ができたら、後は存分に楽器を振り分けます。楽器をオクターヴで重ねるのはひとつの声部をどう表現するかのいわば、“技”のひとつです。
和声的な声部の概念がわかりづらいかもしれませんがブラームスSym.1の一楽章冒頭8小節が複雑そうに見えて、実は4つの声部の整った和声でできていることをお伝えすれば、声部の概念が何なのかお分かりいただけるかもしれません。長々と上から見下ろすような書き込みで申しわけありません。悪意はありません。

<やっぱり暇な作曲家様

おおお。「和声の禁則≠創作の禁則」ですと!!!そりゃまた微妙な!

ところでオクターブユニゾンは全部セーフですよね。

同曲112小節に例の箇所の再現部がありますが、そこでは、ヴィオラの音がC♯、E、Aになっており並行が回避されていますね。面白い。和声の禁則=創作の禁則ではないので、極めてデリケートに取り扱われるべき問題ですが、私見では第11小節に限って言えば、どうやらバッハのうっかりミスのようですね。面白い情報ありがとうございました。

<暇な作曲家様

いらっしゃいませ。お目にとまって光栄です。

貴重なご指摘ありがとうございます。

おおお。確かに。これが平行8度の実物でしたか。

全音のミニチュアスコアと新バッハ全集にもとづくベーレンライターのスタディエディション(管弦楽作品全集)で確認してみましたが、ブランデンブルクの5番第1楽章11小節、ソロヴァイオリンとヴィオラのド♯レミの3つの八分音符が確かに並行8度の関係です。これを和声の禁則だからといって直してしまっている版があるのですか…?(興味があります。不快な書き込みでしたらご削除ください。)

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