指先
クララ・シューマンの弟子の女流ピアニストがブラームスのレッスンを受けた時のエピソードだ。
「左手の3,4,5の指の音の出し方について、何を考えて音を出すのですか?」という問いかけに対するブラームスの答が質問者本人によって証言されている。
「まず第一に音を出してくれる指先のことを考えなさい」とある。
このエピソードを知って愕然とした。何て凄いことを言うのだろう。何せピアノ演奏には疎いので、こうした言葉の効能は判らぬが、確かに考えるキッカケになるだろう。誰あろうブラームスに言われるのだから、言われた側のインパクトは相当なレベルだと思われる。何か大切なことを伝えたくてこう言ったに決まっているのだが、それは何だろうと底まで考えさせられる凄みが感じられる。誰しもが「ここまで考えていない」と舌を巻いた後、真剣に考えること請け合いである。誰もが同じ結論に至るとは思えないが、考えることは無駄ではないのだろう。
このところすっかりバッハのインヴェンションの室内楽版にはまっているおかげで、楽器に触る時間だけはやたらに増えたが、もっと指先のことを考えて弾かなければならない。ピアノとヴィオラで演奏上の共通点がそうそうあるとも思えないが、先のブラームスの言葉には、一笑に付せない含蓄がある。
練習不足で無くなりかけていた指先の「弦ダコ」がこのところ厚みと堅さを増している。今のところ人差し指、中指、薬指だが、これが小指にも出来てくればしめたものだ。
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