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2008年6月17日 (火)

余分に暗譜

グノーのアヴェマリアは、バッハの平均律クラヴィーア曲集の第1巻第1番の前奏曲をそっくりそのまま伴奏に借用して、旋律を追加したという作品だ。大抵はそう説明されている。

しかし「そっくりそのまま」という言葉には注意が必要だ。グノーの側には、バッハオリジナルには存在しない小節が1つだけ加えられている。原曲の22小節目と23小節目の間に1小節加えられているのだ。だから厳密にはそっくりそのままではないのだ。

原曲となった前奏曲ハ長調を含む「平均律クラヴィーア曲集」は古来、ピアノ演奏の「旧約聖書」にもたとえられるほどの名曲だから、おびただしい数の筆写譜が存在した。18世紀から台頭した楽譜出版社は、出版にあたって特定の筆写譜を底本に採用した。問題の1小節は、数多い筆写譜のうち、1783年にシュヴェンケという人の残した筆写譜にしか現れない。困ったことに18世紀から19世紀にかけて、当時もっとも普及していたチェルニー版をはじめ多くの版が、このシュヴェンケの筆写譜を底本にしていたのだ。

1883年、この点に注意を喚起したビショフ版が出現するまで、1小節多いバージョンが一般に流通していたことになる。グノーのアヴェマリアは1859年の発表だ。アヴェマリア作曲の際、グノーの手元にあったのは、シュヴェンケに準拠した楽譜であったことは間違いない。アヴェマリアの余分な1小節はこれで説明が付く。グノーはバッハ作品に勝手に1小節挿入する程傲慢ではなかったのだ。

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第1巻162ページに興味深い記述がある。クララ・シューマンの高弟であるフローレンス・メイの証言だ。ブラームスはピアノレッスンの教材にバッハの作品を使う場合、チェルニー版を推奨しているのだ。彼女の証言は1871年のことだ。つまりビショフ版が出る前である。だからその中のハ長調の前奏曲は、シュヴェンケの写本の通り1小節多い版であることは確実だ。

それからさらに遡って少年時代のブラームスはマルクセン先生の許でバッハを学び、「平均律クラヴィーア曲集」全48曲を暗譜していたらしいが、この1小節分を余分に暗譜していた可能性が高い。

今日はグノーさんの190回目の誕生日である。

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