打ち出の小槌
著書「ブラームスの辞書」で「poco f espressivo」を指して「打ち出の小槌」と表現している。ブラームスは生涯に33回「poco f espressivo」と楽譜に記した。「poco f espressivo」を含む語句となるとさらに3つが加わる。
「ブラームスの辞書」の執筆でもこの項目に喜々として取り組んだ記憶がある。ほとんど我を忘れるといったノリだった。それほどおいしい旋律が多いのだ。この36箇所のことに一通り言及しているだけで本になりそうである。「ppp」から「fff」に連なるダイナミクスメーター上の目盛りの一つだと割り切ることは出来ない。単なるダイナミクスの表示にとどまらない何かを感じている。ほとんど感情表現になってしまっている。「poco f espressivo」を楽譜上に記す記さないの基準なんぞ、常人の思いつく限界を超えている。ブラームスの本能が命じたからだ。
初出の弦楽六重奏曲第1番の冒頭から交響曲第4番第2楽章88小節目まで、ほぼ器楽作品に集中して出現する。
独唱歌曲では唯一作品「71-2」の65小節目のピアノパートに現れることや、上記第四交響曲の出番を最後にプッツリと姿を消すことなど謎も多い。
私にとっては宝物だ。
« op200 | トップページ | サプライズは続く »
« op200 | トップページ | サプライズは続く »
コメント