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2008年8月31日 (日)

ミスターセレナーデ

現在も続く日本人選手のメジャーリーグ挑戦のパイオニア、野茂英雄投手の誕生日だ。7月に引退を表明した。心からお疲れ様と言いたい。

ほぼ無名の高校時代を経て社会人野球から8球団の競合の末、今は無き近鉄バッファローズに入団。この時の背番号は「11」である。その後の活躍は周知の通り。

やがて1993年、アメリカメジャーリーグの門を叩きロサンゼルスドジャースに入団。背番号は魅入られたように「16」となった。メジャーリーグでは今のところ20世紀と21世紀両方でノーヒットノーランを達成した唯一の投手だ。

日本での背番号は「11」、アメリカでは「16」というイメージが強い。私のようなブラームス好きはこの時点で既に脳味噌が反応してしまう。

ブラームス初の管弦楽作品に管弦楽のためのセレナーデ第1番ニ長調がある。時間をおかずに発表された同イ長調第2番とともにブラームスの管弦楽の初期を彩っている。これら2曲の作品番号が「11」と「16」である。脳味噌の過剰反応の原因はこれだ。

引退の報道があった7月から野茂投手に言及したサイトやブログは多いと思うが、こんなことを言っているのは多分私だけだろう。

おそらくブラームスはもちろん、野茂投手も関知しない話である。

2008年8月30日 (土)

ブラームス神社

<ご創建> 2008年8月30日

<鎮座地> ブログ「ブラームスの辞書」左サイドバナー

<御祭神> ヨハネス・ブラームス

<氏子総代> アルトのパパ

<縁日> 下記の通り。

  • 5月7日 御祭神の誕生日。
  • 9月13日 女神クララの誕生日。

<縁起> ブログ「ブラームスの辞書」通算10万アクセスを期に、読者憩いのツール設置をとアイデアを練っていたところ、このほどうってつけのブログパーツを発見しこれをお祀りすることとした。世の中寺社仏閣は多々あれど、音楽の神様が見当たらないことがヒントとなった。欧州起源の音楽がここ日本でも興隆しているので違和感は無い。

<ご利益> 当ブラームス神社には以下の通り多様なご利益があるとされている。特にブラームスの演奏に関して霊験あらたかである。ブラームス作品が演奏されない場合は効果が期待できない。イベント系、演奏上級系、演奏中級系、演奏初級系、表現系、愛好家系、等多彩なご要望にお応えします。

  1. 卒演トレビアン 卒業演奏あるいは卒業試験の成績に関するもの。
  2. 発表会成功 発表会での演奏をつつがなく。
  3. 演奏会大入り 聴衆が鈴なりを期待する。
  4. 音大合格 試験でブラームスを演奏する場合にのみ有効。
  5. 出たとこ勝負ご加護 練習はともかく本番で最高の出来。
  6. 暗譜飛び除け 身の毛もよだつ暗譜飛びの防止に。
  7. 譜読み成就 エレガントな譜読みのために。
  8. ソロ度胸 第一交響曲のコンマスはもちろんホルン、木管のトップ奏者たちに。
  9. 譜めくり無事 室内楽奏者必携のお守り。
  10. 指回し平安 16番「走り除け」との併用で完璧。楽譜の16分音符上に貼って使用。
  11. 弦切れ無用 本番中の弦楽器の弦切れ予防に。
  12. リード開運 リード選びのご守護。あるいはリードミス除け。
  13. あがり退散 あがりの予防に。
  14. 難所安全通行 曲中の難所のクリアに。
  15. 音程守護 初心者必携のお守りをどうぞ。
  16. 走り除け 同じく初心者必携だ。
  17. ピタッとチューニング これも初心者必携だ。
  18. ハイノート安定 弦楽器管楽器を問わず高い音のために。声楽にも効能あり。
  19. アインザッツ安全 アンサンブル初心者向け。
  20. ぴちぴちアレグロ
  21. しっとりドルチェ
  22. どっしりベースライン
  23. 入手困難克服 チケットや楽譜あるいはCDなどレアアイテムの入手に。
  24. 残業除け コンサート当日の残業あるいは突発トラブル除け。

※御祭神様がやきもちを焼くので「縁結び」をお願いしてはいけません。

<御祓い> 本番使用の楽譜や楽器をおはらいしましょう。

<お賽銭> マウスで操作しましょう。記事が気に入ったらお布施を上げてください。気に入らないときは賽銭泥棒も出来ます。参拝が終わったら「参拝終了」をクリックしましょう。これでお布施の金額が確定します。願い事があるときは出来るだけ賽銭泥棒はやめましょう。詳しい操作方法はブログパーツ「賽銭箱」の枠外「HELP」をクリックしてください。表示が小さいのでよくさがしましょう。

<拍手> お賽銭を入れたら手を打ちます。ヘミオラ、後打ち、シンコペーションなど錯綜したリズムで鳴らすほどご利益があるとされています。この後頭の中で問題の場所を1回歌いましょう。

                                            氏子一同

2008年8月29日 (金)

アフィリエイト

自分の運営するブログやホームページを通じて書籍やCDが売れた場合、販売額に応じて手数料を受け取れる仕組みのことだ。

1冊1枚あたりのリベートはわずかでも、ちりも積もれば何とやらで、月収にすると結構な金額になってしまっている勝ち組の体験談などをよく見かける。

ブロガーの端くれとしては、気がかりである。気がかりであるばかりか、日本銀行券だけはいくら持っていても邪魔になったためしがないので、勝ち組とやらに入りたいとも思う。

ところが、ブログ「ブラームスの辞書」だけは、アフィリエイトにはなじまないとも思っている。ブログ「ブラームスの辞書」は元々、自著の宣伝用に立ち上げたブログだ。そのブログで他人様の本の宣伝をするというのはパラドックスである。平たく言うと間抜けだ。そこからもたらされる日本銀行券は、心情的に受け取りにくい。またブログも書籍も「ブラームスの辞書」はお薦めCDネタを発信しないことが一つの決まりだから、CDのアフィリエイトも今ひとつ気乗りがしない。こうした姿勢が、ブログの読者層や本の購買層を結果として狭めることになるかもしれないが、仕方がない。

ブログのサイドバーにCDや他人様の著書がズラリと並ぶのは、「ブラームスの辞書」においてはあり得ない。

2008年8月28日 (木)

ブログの記録

世界中のブログの中で日本語のブログが一番多いらしい。英語や中国語を抑えて第一位とは凄い。日本人はブログ好きなのだろうか。日本人に限らず人は何らかの形で自己表現をしたいものなのだと思う。たまたま日本のブロードバンド環境やパソコンの普及度が世界でも有数だという条件が重なったのだと思う。

そんなことより、誰がどうやって数えたかの方が気にかかる。ついでに世界で一番記事が堆積したブログの記事の本数はどのくらいなのか誰かが調べていないだろうか。世界最長の毎日更新記録は何日くらいなのだろう。

ブログ「ブラームスの辞書」は本日のこの記事が1234本目に相当する。まだ予選敗退あるいは書類審査のレベルだろうが、そのうち世界を視野に入れてみたいものだ。

2008年8月27日 (水)

宿題完成

7月19日の記事「マッコークルの隙間」でブラームス関連地名リストを作成すると宣言した。夏休みの宿題にちょうどいいとも書いた。本日までにそのリストが一通り完成を見た。漏れも誤りもあるに決まっているが、思い切って公開することにした。あれこれ指摘を受けながら仕上げをする段階に入るとも言える。

念のためと思って本を見直すとその度に拾い漏れが見つかる。きりがないからどこかで区切りをつけねばならない。もうすぐ2学期が始まるというのはその区切りにちょうどいい。

元々私は地名が好きだった。会社生活1年目で奈良県を担当し走り回ったころ、古代地名が現在もなお生きていることを実感してのめり込んだ。転勤族として松山、宇都宮、熊本、福岡を転々とする間、ご当地の地名をコツコツと研究した。転勤先ではいつも真っ先に地図を買い求めた。今も自宅周辺の地名の由来を調べている。本当は地名研究の道に進みたかったくらいだ。もちろんそうした嗜好はブラームス好きと何ら矛盾することなく脳味噌の中に併存していた。ロベルト・シューマンは入院先でしばしば地図を所望し、ブラームスが買い求めて届けたことは少し詳しい伝記には書かれているが、それを知った時点では大きなうねりに発展することは無かった。

全ての転機は、ドイツ国立図書館への献本だ。我が子同然の「ブラームスの辞書」op200の旅路をトレースする過程で、耳慣れない地名に出会ったことだ。旅のイメージをより具体的にふくらませるためにドイツの地図を買い求めた。巻末の索引が膨大な地名情報のかたまりであることに気付いて脳味噌が反応した。

ブラームス関連地名をリスト化するというアイデアは地名好き、ブラームス好きであれば当然の帰結だ。むしろ遅過ぎたくらいである。この視点に気付かせてもらえたというのも、ドイツ国立図書館のおかげだ。

さてさて夏休みの宿題が出そろえば、9月には作品展と相場が決まっている。

9月に入ってから折を見て、カテゴリー「72 地名辞書」を創設し成果を公表することにする。新しい記事ほど上に表示されるブログレイアウトの特性を考慮し「ラ行ワ行」から順に紹介する。全8回のシリーズ物だ。

ブラームス先生から花マルがもらえるといいのだが。

2008年8月26日 (火)

次の展開

これが作品の受け手に読まれると、「マンネリ」「月並み」という類の批判を受けかねない。音楽や文学など「流れ」が重要な芸術において顕著である。いわばクラシック音楽の諸形式は古来から積み上げられた経験の堆積だから、少しクラシック音楽に慣れて来ると曲の流れが判るようになる。ソナタ形式、ロンド形式、フーガ、メヌエットなどなどだ。

だから形式に捉われないことを信条とした作曲家たちは、次々と既存の形式に従わない新機軸にトライした。「次の展開」を読まれてしまうことがないから、「マンネリ」「月並み」という批判をかわすことが出来る。

ブラームスの行き方は少し違う。聴衆が「次の展開」を読みきっていることを前提に、その読みの裏をかくのだ。だから「読んでください」とばかりに既存の形式にどっぷりと浸かった作品を出し続けた。交響曲、協奏曲、ソナタ、変奏曲など標題を与えないことで、ある程度のレベルの知識や耳を持った聴衆が「次の展開」を読むことを想定している。そうしておいて「次の展開」が読まれていればいるほど効果がある「微妙なひねり」を連発してみせる。連発してはいるのだが、大所高所に立って眺めれば、やはりそこには確固たる形式感が備わっている。どんなに美しい旋律にも論理の裏づけがあり、どんなに堅固な変奏曲にも美しい旋律がある。

もちろんその「微妙なひねり」も味わいの中心の一つではあるのだが、「読みの通りに」展開するというのも実は快感だ。毎回「この紋所が目に入らぬか」とクライマックスを迎える時代劇が、長寿番組になっているのもそのせいだ。肝心なのはバランス。ブラームスはその匙加減が絶妙なのだ。

「次の展開」が読めるようになればなるほど、「微妙なひねり」に感嘆することが出来る。ブログ「ブラームスの辞書」は書籍版とともに、「次の展開」をより豊かに読むための助けになりたいと思う。

2008年8月25日 (月)

蓄積の賜物

ブラームス最後の作品、それは「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122である。伝記によればクララ・シューマンの死後イシュルで作曲されたとある。これら一連のコラール前奏曲は定旋律と呼ばれる古くから伝わる賛美歌をベースに装飾を施したものである。つまりコラール前奏曲の作曲を決意するということは、つまり曲をつけたい賛美歌、定旋律を選ぶことから始まると申して良い。

我が家にある楽譜にはその11曲全てについて元の定旋律の出所が載っている。

8番の至宝「1輪のバラが咲いて」のハーモニーはミカエル・プレトリウスが施したものだ。この人は6月3日の記事「狩の獲物たち」の中に出てきた。リストの11番目にいる。

9番と10番は同じリストの10番目に現われるハンス・レオ・ハスラーだ。

最後のコラール集を作曲する際、ブラームスは若い頃収集したバロック初期の作品群を当たったのだ。バッハを100年も遡る時期の作品がいつでも取り出し閲覧可能な状況に整理されていたと見るべきだ。

先輩作曲家の「禁則違反」でさえきれいにリスト化されていたくらいだから、いずれ作曲の素材になるような作品は、いつでも取り出しが可能だったに違いない。

2008年8月24日 (日)

ポジション番号

大学入学と同時にヴィオラを始めた私のデビュー演奏会はブラームスの第2交響曲だった。当時のパート譜はすさまじかった。全ての音符の上に指番号がふってあった。

  1. 人差し指
  2. 中指
  3. 薬指
  4. 小指

チェロはごく希に親指を使うこともあるが、ヴィオラはこの4本だ。これらの番号が指番号と言うわけだ。このほかにポジションの変わり目には線が引かれていた。口の悪い先輩からは乱数表とまで言われていたものだ。

次女のトロンボーンの楽譜を見て驚いた。全部の音符ではないが、数字が書いてある。これは何かと尋ねると「ポジション番号」と即答された。トロンボーンのスライドの位置を決定する右腕の延ばし具合のことだ。1から7までの7通りあるという。1ポジションがもっとも手前で、腕はたたまれる。7ポジションはもっとも腕を伸ばした位置で、体格によっては届きにくいらしい。同じポジションでも唇の調整で別の音を出すこともある。

快速なテンポで流れる曲においても、楽譜を見てとっさにポジションを察知しなければならないから、ポジション番号が書き込まれることになる。

断っておくが、次女のヴァイオリンの楽譜には指番号なんぞ書いていない。バッハのコンチェルトでさえ皆無だ。書き込みは多いが指番号は不要なのだ。

トロンボーンの楽譜に書かれた数字は全て次女の筆跡だ。自ら必要性を感じて書き込んだことは明らかだ。普段は寡黙な次女の気迫が伝わってくる。

2008年8月23日 (土)

歌垣

「うたがき」と読む。古代日本の習俗だ。年に1度あるいは2度、聖なる場所に若い男女が集って、歌を詠みかけ相手を探す行事。関東地方なら筑波山、関西なら椿市が有名だ。

近隣の集落から若者が集まったという。年頃になると「歌垣デビュー」というシーンが見られたはずだ。おそらく祭りの一環なのだろう。「今夜ばかりは無礼講」といったノリが想像出来る。近隣の集落から集まることに大きな意味がある。自集落の中だけで相手を探していたら、煮詰まればやがて近親婚の危険が排除出来まい。

夏祭りにもこの系統の起源を持つものが混在していそうである。

はてさてこのオープニングでブラームスネタに落とすのは神業が要る。

作品31の四重唱の中の1番「歌と踊りと」は、まさに「西洋版歌垣」と思える。「祭りの夜に目当ての娘を探して、歌って踊ろう」というテキストだ。そこで描写されるのは気取りも飾りもなくストレートに女性を求める男の姿だ。いささかなまなましいテキストながらブラームスの与えた旋律には品格が感じられる。今のところ一番気に入っている四重唱だ。テキストの意味を知らずに聴いていたのだが、もっと敬虔なシーンをイメージしていた。元々聖と俗は紙一重なのか、ブラームスの技法のせいなのか判然としない。

明日長女が浴衣を着て近所の盆踊りに出かけるという。なんだか心配だ。

2008年8月22日 (金)

スペルの復元

8月13日の記事「地名リストの作り方」の中に作業工程がある。その8番目に「カタカナ表記からオリジナルのスペルを復元すると書いてある。

サラリと書いたがこれがなかなか大変である。

  • そのカタカナ語は元々どんな言語だったのか特定する。ブラームスの伝記だからドイツ語が多い。
  • その伝記がいつ日本語に翻訳されたか。たとえば「ウ」への濁点はあまり古い書物では出現せず、バ行になっていることも多いからだ。

これらを前提として確認してから概ね以下の要領でオリジナルのスペルを復元する。

  1. アー 大抵は「ah」だと推定出来るがドイツ語には「aa」という具合に、「a」の連続もあるので用心。
  2. アイ これには「マイ」「タイ」「ライ」「ナイ」等も含む。大抵は「ei」である。
  3. イー 「ie」であることが多い。
  4. イェ 「JE」だ。「YE」はあまりない。
  5. ウ 素直に「U」を想像するが、古い翻訳では「W」のこともある。
  6. ヴ 英語に慣れていると「V」を想像するがむしろ「W」であることも多い。
  7. エ 「E」はもちろんだが、ウムラウトされた「A」あることもある。さらには「O」のウムラウトの苦し紛れの姿であるこさえ珍しくない。
  8. オイ 厄介なパターンの一つだ。ほぼ「EU」である。
  9. ~ク 地名末尾の「G」だ。これが「~グ」と表記されていることもある。
  10. ザ行 語頭の「S」は大抵濁る。「Z」はむしろ「ツァ行」だ。
  11. シュ 「T」や「P」の前に置かれた「S」がこの発音。もちろん「Sch」が主体だ。
  12. ツ まあ大抵「TZ」だ。
  13. ツェ 「ZE」あるいは「CE」か。
  14. ~ト 語尾の「D」は濁らない。
  15. ~ハ ほとんど「~ch」である。
  16. ~プ  「~b」の可能性も考慮する。
  17. フォ 「フ」に小さな文字が添えられる。「F」を考えるほか「V」の可能性もある。
  18. ユ 小さな「ユ」はウムラウトの「U」であることを疑うべし。
  19. ラ行 「R」か「L」か悩ましい。

全体として子音の重複やカタカナ長音棒の扱いなどは慣れるしかない。

学生時代に習ったドイツ語の基礎を今更という感じである。今は真剣である。しかし全く苦にならない。こうして見当をつけたスペルを地名索引上で見つけるのは快感である。

2008年8月21日 (木)

BWV654

オルガンのための18のコラールの中の4曲目だ。「装え愛する魂よ」と題される。8月4日の記事「コラールを歌う」で述べたとおり、このコラールはブラームスのop122-5と同一のコラールが下敷きになっている。カンタータ180番の第7曲に比べると似方が今ひとつでがっかりしていたのだが、その後調べていてお宝情報を発見した。

1840年ライプチヒ・トマス教会においてバッハ記念碑のための演奏会が行われた。もちろんオルガンの演奏会だ。演奏者はメンデルスゾーン。このときの聴衆の中にロベルト・シューマンがいたのだ。メンデルスゾーンに書き送った手紙の中で絶賛しているのがこのコラール「装え愛する魂よ」BWV654なのだ。美しい装飾振りを褒め称えている。装飾振りを誉めることが出来るのは、原曲のコラールを知っているからに違いない。

ブラームスはきっとこのエピソードを知っていたと思う。まさにドイツ音楽の伝統を感じる。バッハもシューマンも、メンデルスゾーンも、ブラームスも、一つのコラールを見つめていることになる。

2008年8月20日 (水)

地図を集める

8月13日の記事「地名リストの作り方」で簡単なノウハウを述べた。ブラームス関連本に登場する地名を片っ端からエクセルに入力してリスト化する。日本語で書かれた本だから登場する地名は全てカタカナだった。これを元にドイツ語の綴りを確定する作業には地図、敢えて申せば索引が欠かせない。先般「ブラームスの辞書」op200の旅路をトレースするために地図を買い求めたが、続けていくつかの地図が集まった。

  1. 某有名タイヤメーカーの地図 3900円 紙が薄い上にリングファイルだから取り扱いが難しい。持ち運ぶと痛みやすいのも難点。しかし、これ一冊でベネルクス、スイス、オーストリア、チェコまでカバーしてくれるのは貴重。どちらかというと道路地図に特化している。30万分の1だ。
  2. FALK社製 2520円 ドイツと欧州の地図。製本が頑丈なので通勤や出張のお供に最適だ。ドイツと欧州に限られているのが難点。索引の細かさは合格。都市地図が充実しているのも嬉しい。20万分の1。
  3. ハンブルク市の地図。25000分の1。1600円。
  4. ウィーン市の地図。25000分の1。1600円。

上記1は道路地図だ。旅行者向けであることは地名ハンティングには好都合だ。地形の詳細が把握しにくいという難点がある。そこを補うために上記2を買い求めた。直線距離だと近いのに、道路が大きく迂回しているケースがある。地形の詳細な地図があれば、そこが山地であることが解り、大きな迂回にも合点が行く。

上記3、4の都市地図は悩ましい。別冊の小冊子に詳細な通り名索引が載っている。これがとてつもないお宝だ。難を言えばブラームスが立ち寄った都市全ての地図が欲しくなる。さしあたりウイーンとハンブルクだけで辛抱している。

現地に行かずに何とか土地勘を獲得したいのだ。

2008年8月19日 (火)

屈折

本が売れれば喜ぶくせに「買ってください」とは言わない。ブログが読まれれば嬉しいくせに「読んでください」とは言わない。コメントがつけば嬉しいくせに「ご意見をどうぞ」とは言わない。みんな自分のことだ。つまり素直ではないのだ。気持ちがストレートに行動に直結しないとき、しばしば「屈折している」と形容される。

光が界面を通過する際に曲がることを指す用語だが、転じて素直でないことを形容する場合に用いられているというわけだ。

ブラームス評において用いられる言葉のランキングがあったら間違いなく上位に来る。ブラームス本人にその意識があったかどうかわからないが、彼の伝記を読んでいると、なるほどという場面が多い。もっとも代表的なのは「好きなのに好きと言わない」であろう。いわゆる青春時代において、この「好きなのに好きと言わない(言えない)」は、一度くらいは誰でも経験するから共感されやすい。とりわけブラームスにはそうしたフィルターを通して聴いても違和感のない作品が多いから、頻繁にこの言葉が奉られる。

この「思い通りにならないこと」がブラームスの創作のエネルギーになっていたとさえ感じられる。理想と現実のギャップをエネルギーにして作曲しているような気がする。理想と現実のギャップというからには、「理想」があることが前提である。「高らかな理想」であるか「ささやか理想」であるかは問わぬが、「理想が存在すること」自体は疑えない。

一方でその理想を次々と実現させることが創作のエネルギーになった人たちもいると思う。ひとつ実現すれば「もっと」という具合にエスカレートする。そういう人の作った作品は、けして「屈折」とは表現されない。

バッハの作品に屈折を感じることはない。バッハとて理想と現実のギャップはあったと思うが、作品には反映していない。そのギャップは別の何かが埋めていたと感じている。もしかするとそれは「信仰」かもしれない。そして恐らくその対象は「神」と「フーガ」と「コラール」に違いない。

ブラームスにおいて信仰の対象の最たるものはもしかすると「クララ」だ。これが本当なら相当むごい。何故ならクララはブラームスにとって理想と現実のギャップそのものだからだ。だから屈折が作品にそのまま反映せざるを得ない。

ブログでこんなことを書くとますます屈折していると思われそうだ。

2008年8月18日 (月)

レンズ豆

サラリーマンの楽しみはランチだったりする。私もそうだ。職場の近所に行きつけのイタリアレストアランがある。週に3回行くことも多い。パスタのランチにはまりこんでいる。

あまりの暑さに冷製スープを頼んだ。何かのマメがたくさん入っていて美味だった。メニュウを見て驚いた。「レンズ豆」だという。おおおってなモンだ。これがレンズ豆かと。

音楽之友社刊行「ブラームス回想録集」第3巻20ページ。シューマンの4女オイゲーニエの回想の中にレンズ豆が登場する。

1864年9月1日ブラームスはシューマン家の長女マリーエにきれいな絵入りの料理本をプレゼントした。マリーエの誕生日だ。その本の中のフレーズが子供心に印象に残っているとオイゲーニエが回想しているのだ。生涯独身を貫きながら演奏旅行で留守がちな母に代わって家事全般を切り盛りすることになるマリーエにはピッタリの贈り物だ。その中で「大好物のレンズ豆は煮込むときに蓋をしないと柔らかくならない」と面白おかしく紹介されているという。

レンズ豆は、西アジアの乾燥した丘陵地が原産で現在の主産地はインドらしい。インドやエジプトでポピュラーな食材だそうだが、イタリア料理にもちょくちょく用いられると物の本に載っていた。19世紀後半のドイツでも珍しい食材ではなかったようだ。直径5~10ミリの丸形。マメの形状が凸レンズに似ていることが命名の根拠だと思われる。

レンズ豆がシューマン一家の食卓に上ったことは確実だし、もしかするとブラームスが食べた可能性も否定出来まい。何だか得した気分である。

2008年8月17日 (日)

ブラバンは体育会

次女にトロンボーンを買ってから3ヶ月半が過ぎた。

お姉ちゃんが部活動のバドミントンを引退した今、我が家で唯一の部活だ。夏休みだというのに毎日朝早くから夕方遅くまで練習をしている。今日までの1週間がわずかな夏休みで、明日からまた部活だ。

夏休みに入ってからしばらくは弁当を持って出かけ5時頃帰宅だった。夏休みの1週間も毎日家で1時間は吹いていた。なんだか体育会っぽい。

バドミントンのお姉ちゃんがヘトヘトになって帰宅することはよくあった。運動部とは言っても3年生ともなると貫禄で、最後の方ではあまり疲れた様子も見せなかった。かえってブラバンの方が厳しいような印象だ。

トロンボーンを始めて自分のヴァイオリンがどの程度なのか判ったと言っている。ヴァイオリンを100とすれば、トロンボーンは10から20だという。

トロンボーンが100になるようにがんばるのはもちろんだが、ヴァイオリンを500や1000にするのも忘れないで欲しい。

2008年8月16日 (土)

土地勘

その土地その土地の地理状況に根ざした方向感覚とでもしておく。

「土地勘がある」という用いられ方をする。無いよりあるほうがいいに決まっているが、凶悪事件が起きると「犯人は土地勘のある人物だと思われる」などという言い回しもされるので注意が必要だ。

ブラームスの伝記を読んでいればおびただしい数の地名に遭遇する。現在これをリスト化するというプライヴェートなプロジェクトが進行中だ。

このプロジェクトの目的はまさにこの土地勘の醸成に尽きる。私自身ドイツに行ったことが無いから土地勘はゼロだ。東京生まれの私ではあるが、誰かが京都、大阪、神戸に演奏旅行に出かけたと聞けば、「関西ツアーなのね」と感じることが出来る。これが土地勘だ。関西地方に土地勘は無くても、日本を大まかに捉える土地勘は持っているということだ。これがブラームスの伝記に現れる地名となるとかなりあやふやだ。たとえば白地図を目の前に置かれて、「ウィーン」「ハンブルク」「ベルリン」などの著名な大都市の位置を正しく指摘出来るだろうか。もっと小さな街になると難易度はさらに上がる。ドイツを含む中部ヨーロッパの土地勘はブラームスの伝記を生き生きと理解するためには必須と感じる。

さらに土地勘は必要に応じていくらでも深めて行けるのが楽しみの一つである。先の関西ツアーはもしかすると、河原町、高槻、三宮が会場だったかもしれないのだ。

本当は現地を訪れて迷子になるのが一番だが、そうも行かない。そこで役立つのが地図だという訳だ。

2008年8月15日 (金)

祝13万アクセス

本日午前10時15分頃ブログ開設以来のアクセスが13万に達した。

  •  10000アクセス 2006年 3月 8日 283日目
  •  20000アクセス 2006年 8月30日 458日目(175日)
  •  30000アクセス 2006年12月30日 580日目(122日)
  •  40000アクセス 2007年 3月28日 668日目( 88日)
  •  50000アクセス 2007年  6月21日 753日目( 85日)
  •  60000アクセス 2007年 9月 7日 831日目( 78日)
  •  70000アクセス  2007年11月 8日 893日目( 62日)
  •  80000アクセス 2008年 1月 4日 950日目( 57日)
  •  90000アクセス 2008年 2月13日 990日目( 40日)
  • 100000アクセス 2008年 4月 3日1040日目( 50日)
  • 110000アクセス 2008年 5月21日1088日目( 48日)
  • 120000アクセス 2008年 7月 5日1133日目( 45日)
  • 130000アクセス 2008年 8月15日1174日目( 41日)

お盆の民族大移動の煽りを受けてアクセスが失速したのは、2005年と2006年だった。昨年からこの傾向に歯止めがかかり、今年はむしろ増加に転じた。もっとも心配した8月11日(月)から昨日14日(木)までのアクセスは下記の通りだ。

  • 8月11日(月) 328アクセス
  • 8月12日(火) 305アクセス
  • 8月13日(水) 374アクセス
  • 8月14日(木) 316アクセス

今まで3日連続して300アクセスを越えたことは一度もなかった。それがいきなりの4日連続300アクセスだ。特に11日から13日までは1000アクセスを越えた。3日で1000アクセスも初めての出来事だ。夢の月間1万アクセスに弾みがつく。

昨日までのところ8月の1日平均アクセスは約252。昨年の8月は125だったし、一昨年はたったの45だったから、今年の凄さが判る。

このような弱小ブログに毎日250を越えるアクセスとは恐縮である。原因は自分でも判っていない。今のブログコンセプトが読者の無言の支持を受けているなどと申しては、何やら当選の喜びの声みたいだ。

アクセスしていただいた皆様にあらためて感謝申し上げる次第である。

2008年8月14日 (木)

野望

8月9日の記事「クォドリベート」を書いていて思いついた。

次女がトロンボーンをはじめたということは、しみじみと凄い。我が家の合奏の形態に新たな地平が開けたのだ。従来ヴァイオリン2とヴィオラ1という限られた可能性しかなかった。B管とはいえ、ヘ音記号を本拠地とする楽器が加わったのは心強い。

バッハのゴールドベルグ変奏曲には、シトコフスキーによる弦楽三重奏版が存在する。某巨匠チェリストを含む地球代表のようなメンバーによるCDが最近話題になっている。

チェロのパートをトロンボーンに読み替えると我が家にピッタリになるではないか。ゴールドベルグ変奏曲の第30変奏「クォドリベート」だけでもやってみたい。

2008年8月13日 (水)

地名リストの作り方

7月19日の記事「マッコークルの隙間」でブラームスの伝記に登場する地名リストを作ると宣言した。現在作成中だ。

  1. 音楽之友社刊行の作曲家◎人と音楽シリーズのブラームスを基礎資料に選定する。一番新しく最新の研究が反映されているからだ。
  2. 上記書籍の前半ブラームスの生涯編に登場する地名を全てエクセルに入力する。
  3. さらにそれを50音順にソートし、各々の地名が何回ずつ登場したかを仮一覧表にする。
  4. ざっと110種類の地名が合計720回登場することが判った。
  5. 我が家にあるブラームス関連書物を読み、仮一覧表に存在しない地名が登場したら一覧表に加える。
  6. マッコークルに登場する全作品の初演地と作曲地の情報で仮一覧表にない地名があったら加える。
  7. ドイツの地図帳巻末の索引を用いて全ての地名のスペルを確認しリストに記入する。
  8. 実際の地図上の位置を確認する。

意外と苦しいのが6番だ。日本語の書物に現れる地名はカタカナになる。漢字と平仮名の中にポッツリとカタカナが混ざると大変見つけ易い。ドイツ語の書物だと全部アルファベットだ。アルファベットの海の中から地名を抜くのは骨が折れる。単語の頭が大文字になっているのが救いだが、漏れも相当あるだろう。

間もなくリストが完成する。既に約290の地名がリストアップされている。今一番の課題はこれをどのようにしてブログで発表するかだ。290という数は想像より多い。一回の記事で全部を掲載するのは無理だと思う。

悩ましい課題も抱えているが、とても楽しい作業だ。書物を読み返すうちに20個くらいのネタを思いついた。

この記事を機会に新たにカテゴリー「71 地名探検」を創設して関連記事を集約する。

2008年8月12日 (火)

ピストル

1875年8月12日、ブラームスは出版商ジムロックに宛てた手紙の中で、ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60を評して「楽譜の表紙にピストルを頭に向けている人を描くといい」と述べている。

この作品に言及する文章があればけして避けて通ることの出来ないエピソードである。作曲への着手から完成までに長い中断があったこともあって、古来憶測を呼んできた。作曲当時の心境を何らかの形で反映してるものと思われる。

ブログ「ブラームスの辞書」ではここで、新たに憶測を重ねる道を選ばない。独自の方向に話がそれて行くのだ。

ピストルとは英語で言う「ハンドガン」のことだ。片手で扱える小振りの銃器の総称だと解してよいのだと思うが、語源が定かではないらしい。

ドイツのピストルといえば、有名アニメの影響もあってワルサーP-38がすぐに思い浮かぶ。ブラームスがこれを思い浮かべていれば記事として完璧なのだが、そうも行かない。ワルサーP-38がドイツ軍の正式銃となるのは1938年を待たねばならない。ワルサー、ルガー、モーゼルなどで名高いドイツの実用自動拳銃の普及は1890年代なので、1875年の段階ではまだ知られていない。

恐らくアメリカ起点に1860年代末期から普及し始めたリヴォルバーだと思われる。庶民のブラームスが簡単にイメージできるほどドイツにおいても普及していたと思われる。

ビートルズのアルバムのタイトルにもなった回転式の拳銃のことである。

2008年8月11日 (月)

カンタータ180番

本日発売のコミック「のだめカンタービレ」第21巻の表紙に楽器は描かれていない。私が「のだめの中のブラームス【25】」で予見した人間の声だと思われる。これはブラームスネタではないからサラリとやり過ごすことにした。

幸いブラームスネタは無かったから、安心して記事をアップする。

8月4日の記事「コラールを歌う」で言及したバッハのカンタータ180番のCDを入手した。「コラールを歌う」の中で第7曲が、ブラームスのオルガンのためのコラール前奏曲「装え愛する魂よ」op122-5と同じ旋律だと述べた。ブラームスが採用したコラールの源流を味わいたくて思わず買い求めた。

もちろん第7曲目当てだったが、予想を裏切られた。このカンタータ第1曲、第3曲、第4曲そして恐らく第5曲も「装え愛する魂よ」の旋律が下敷きになっている。お目当ての旋律を小出しに仄めかしながら進み、終曲で初めて全貌を提示する構造になっている。これがいわゆるコラールカンタータなのだと実感した。コラールの旋律が、カンタータ全曲を通じて徹底的に利用されるという形式のことだ。

唐突に弦楽四重奏曲第3番変ロ長調op67を思い出した。

素知らぬ顔で始まる第4楽章は変奏曲だ。淡々と変奏を重ねて行き、たどり着く果てに待っているのは何と、第1楽章の冒頭主題なのだ。コラール変奏曲と同じ骨格になっていると思った。

小出しでじらされた挙句に始まる第7曲は感動的だ。会衆全員が参加できるシンプルで平易な構造であることが、味わいを深めている。カンタータの最後でお目当ての旋律を気持ちよく歌えるのだ。ブラームスのop122-5と寸分たがわぬ旋律になっている。「えっ、もう終わりなの」というくらい呆気なく終わってしまうのも味わいのうちだろう。

きっと一生の宝だ。

2008年8月10日 (日)

記事が記事を呼ぶ

今こういう状態。

先が楽しみな事がいくつか平行して起きている。

ドイツ国立図書館ネタ、ココログ出版ネタに加え、地名リスト関連ネタもある。さらに次女の演奏会も近い。

これらは何が起きるか判らないことも多いから、先行して記事の備蓄が出来ない。事が起きてから急いで記事にする。これに対して1日に公開出来る記事は1本だから、公開予定日の分捕り合戦の様相を呈してきている。4声のフーガを書くというのはきっとこういうことなのだろうと思う。

備蓄記事をほとんど切り崩さないまま1週間が経過することさえある。

嬉しい悲鳴だ。このうえ明日コミック「のだめカンタービレ」最新刊にブラームスがてんこ盛だったらパニックである。

2008年8月 9日 (土)

クォドリベート

「Quodlibet」と綴られる。既知の旋律を同時に歌う唱法のことだ。中部ドイツ一帯に音楽一家として君臨していたバッハ一族は定期的に集まって、情報交換したり結束を確かめ合っていたという。その席上では決まってクォドリベートが演奏されていた。メンバーが皆有能な音楽家なればこそである。偶発的に生じる奇妙な対位法を楽しんでいたと思われる。

それがバッハの作品にも反映している。あまりにも有名な「ゴールドベルグ変奏曲」BWV988の第30変奏だ。

ついに大好きなゴールドベルグ変奏曲について述べる日がきた。ト長調4分の3拍子のシンプルなアリアに30の変奏が続く。だから第30変奏というのは、変奏の大トリということになる。このクォドリベートを聴くと「ゴールドベルグ変奏曲」も大詰めという気にさせられる。そもそも「主題と30の変奏」というコンセプトそのものが第4交響曲の終楽章と同じなのだ。由緒正しいブラームス好きは、その時点で鼻の下が伸びてしまう。

民謡風の旋律2つが重ねて奏されることはもちろんなのだが、作品の根幹を形成するベースラインにもキチンと乗っかっている。

何たる風格だろう。この変奏曲を書いたバッハの目的はこのクォドリベートにあったのではないかと思わせるものがある。主題を選んだ時点で、既に決めていたかのようだ。曲の立ち上がりを聴くと勇気が湧いてくる。

そして最後にもう一度冒頭主題が忠実に繰り返される。でもクォドリベートを聴かされた後では、同じに聞こえない。第31変奏に聞こえてしまうのだ。特に3小節目Emへの揺らぎは狂おしい。このあたりの効果もバッハは計算済みかもしれない。

バッハの思う壺の中で眠りたい。

2008年8月 8日 (金)

紙がないと落ち着かない

全くもっておかしなタイトルである。トイレの話ではない。

昨今の科学技術の進歩はめざましい。データの保存技術もしかりである。紙で保管していたデータが電子媒体で保管されるようになり、保管場所の節約の他、素早い検索というメリットも生まれている。環境意識の高まりともあいまって、ペーパーレスが一層推し進められている。時代の流れである。

時代の流れとは百も承知ながら、やっぱり紙があった方が落ち着くという向きは少なくない。年齢性別で感覚も違うだろうが、私の場合で言えばお札がその代表だ。電子マネーは何だか落ち着かない。会議への委任状もやっぱり紙があると落ち着く。それから忘れてならないのは本だ。電子書籍は味気ない。機能は全く同じだったとしてもである。

音楽家の周辺で言うなら楽譜だ。世の中の流れか楽譜の無料ダウンロードサイトというのが繁盛しているらしい。ブログ「ブラームスの辞書」も無料ダウンロードサイト探索のついでに立ち寄る人が少なくない。とくにカテゴリー「楽譜」にはその傾向が強い。まさに時代の流れなのだが、そうしたサイトを目指す人も、最終的には楽譜をプリントアウトして紙で持つことを拒否しないのだと思う。楽譜こそ「やっぱり紙で」の代表である。練習中に書き込みをすることが多いから、紙でないと困るのだろう。

書き込みをしたいというニーズだけなら、液晶画面の進歩でタッチペンによる液晶画面への直接入力も珍しいものではなくなったからさしたる障害ではあるまい。譜面台と同じ形状の液晶画面に楽譜を表示して、それを見ながら演奏するというコンセプトの「電子楽譜」も技術的には十分あり得る世の中になった。足下にスイッチを置けば譜めくりのトラブルも解消出来よう。ハードディスク搭載で数千曲分の楽譜を年中持ち歩きという世界だ。電池の性能も上がったので、足下に電線がいっぱいということもなかろう。

それでも私なら紙を選ぶ。書き込みだらけの楽譜の魅力には抗しがたい。棚に積まれた楽譜の束は宝の山である。

2008年8月 7日 (木)

トロンボーン版アヴェマリア

6月20日の記事「アヴェ・マリア」で、バッハのハ長調プレリュードを暗譜したことにより、「アヴァマリア」を娘たちと合奏出来ると書いた。

あのときはヴァイオリンを想定していたのだが、せっかく次女がブラスバンドでトロンボーンを始めたのだから、いたずらを思いついた。

「アヴェマリア」をトロンボーン用に書き換えた。オリジナルはハ長調だ。これをB管のトロンボーンに合わせて変ロ長調で吹かれては私の暗譜が無駄になる。だからトロンボーンの側にニ長調の楽譜を用意せねばならない。さらにそれをオクターブ下げることが必要だ。楽譜作成ソフトで試したら簡単に出来上がった。トロンボーン初心者の次女には、速過ぎないテンポであることと16分音符が出現しないことが大切だが、この「アヴェマリア」はそうした意味でうってつけである。

楽譜を次女に見せた。「面白そう」という反応だ。新しい曲をもらうのが嬉しいらしい。「でも速過ぎたら吹けない」と言っている。望むところだ。速過ぎると私のピアノが破綻する。

何かブラームスでやれる曲はないものか。

2008年8月 6日 (水)

フラット偏重

8月3日の記事「Bdur症候群」の続きである。

最初の4つの交響曲の調性選択にあたって、一部の作曲家が「変ロ長調(Bdur)」のドレミファという音列に準じているという趣旨だった。ベートーベン、シューマン、ドヴォルザーク、ブルックナー、プロコフィエフだ。

「Bdurのドレミファの音列に準ずる」とは、交響曲の調性が下記の8つから選ばれることを示している。

  • 変ロ長調 フラット2個
  • 変ロ短調 フラット5個
  • ハ長調  調号無し
  • ハ短調  フラット3個
  • ニ長調  シャープ2個
  • ニ短調  フラット1個
  • 変ホ長調 フラット3個
  • 変ホ短調 フラット6個

見ての通り全8種のうち6種がフラット系だ。つまりフラット偏重なのだ。シャープ系になるのはニ長調だけだ。実質的には、変ロ短調と変ホ短調は考えにくいから、選択の幅は6種だ。

Bdur症候群は、実質フラット偏重症候群とも位置づけ得る。ベートーベンの9曲は2番ニ長調と7番イ長調だけがシャープ系であり、すでにフラット偏重だ。後に続く作曲家たちは交響曲の総本山ベートーベン様に倣ったのだろうか。あるいは、移調楽器の都合でフラット便利な事情でもあったのかもしれない。

一方、ブラームスはCdur依存型である。

  • 1番 ハ短調 フラット3個
  • 2番 ニ長調 シャープ2個
  • 3番 ヘ長調 フラット1個
  • 4番 ホ短調 シャープ1個

シャープ系フラット系で見ても、長調短調で見ても2対2となる。ブラームスは自作4つの交響曲の全体像にも気を配っていた可能性がある。ただし、そうしたことを1番の完成時点で既に意識していたかとなると、ただちには頷きがたい。1番2番を続けざまに生み出した後、3番までの間に考えたと解したい。1番ハ短調、2番ニ長調と発表し、仮に3番4番に変ロ長調と変ホ長調を採用したら、Bdur依存型になっていたところだ。実際ブラームスは3番4番にヘ長調とホ短調を採用してあらゆる面でバランスを保った。

単なる偶然として放置するのは少々もったいない。

2008年8月 5日 (火)

数列

高校でこれを習うころから数学嫌いがエスカレートした記憶がある。

一定の法則にのっとった整数の羅列とでもしておく。等比数列、等差数列という言い回しをよく耳にした。

遊びでなら私も創作数列を試みている。名付けて「ブラーム数列」だ。

たとえば「68→73→90→98」である。交響曲とでも名付け得るこの数列が、長寿の祝いにピッタリだということは7月27日の記事「ブラ2寿」で述べたばかりだ。

  • 協奏曲数列 15→77→83→102
  • ソナタ数列  1→2→5→38→78→99→100→108→120
  • トリオ数列  8→40→87→101→114
  • 変奏曲数列 9→21→23→24→35→56
  • セレナーデ数列 11→16→58→70→84→106
  • 3楽章数列 15→38→77→78→83→88→100→102→120(恥ずかしながら訂正)

いくらでも思いつく。こうして眺めると交響曲数列のように長寿の祝いに相応しい数列など、そうそう転がっている代物ではないということがお判りいただけると思う。

2008年8月 4日 (月)

コラールを歌う

このところブラームスが作品に用いたコラールの出典に興味がある。「Gesangebuch」「シェメッリ賛美歌集」以来だ。書店やCDショップではバッハの売り場に足が向く。元になったコラールをブラームスがどう消化しているのか興味深い。同じ曲を元にバッハも作品を残していれば比較する楽しみもある。あまりに手が込んだ装飾で、1度聴いただけでは判らぬこともあるが、それも楽しみのうちである。

このほどバッハのコラールに関する興味深い本を入手した。

「CD付きバッハのコラールを歌う 名曲50選」(キリスト新聞社刊)という本だ。「50曲もの名高いコラール(=讃美歌)をバッハ作の伴奏で歌いましょう」というコンセプトだ。楽譜がキチンと載っていて日本語の歌詞が添えられている。讃美歌集中の番号とBWV番号が併記され、一流のオルガニストによるCDが2枚も付いている。さらに1曲1曲を丁寧なエピソードを交えてサクっと解説してくれる。

何よりもまず歌う楽しさをアピールする意図は明白だ。その次に来るのはバッハの和声付けの凄さを味わいましょうという訴えだ。

ブラームスの「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122の中の2番「敬愛するイエスよ」、5番「装え、愛する魂よ」と7番「おお神よ、汝やさしき神よ」の下地となったコラールが載っているので、即購入だ。家に帰って調べるとさらに「3つのモテット」op110の第3曲「大きな苦しみにあるとき」も載っていた

このうちop122-5「装え愛する魂よ」は、バッハのカンタータ180番の第7曲と、オルガンの」ためのコラール前奏曲BWV654にあると紹介され、CDでは180番の第7曲がオルガン編曲版で聴ける。他の2曲に比べブラームスと旋律がそっくりだ。

これで4200円。つまり我が「ブラームスの辞書」より100円も安い。

2008年8月 3日 (日)

Bdur症候群

7月29日の記事「シューマンの交響曲」で、彼の交響曲を構成する調の主音を1番から順に4つ並べると、Bdurの移動ドで「ドレファミ」になると書いた。実を申すとあの記事は本日の記事の序奏だった。

それではと手始めにベートーヴェンの最初の4つの交響曲を調べる。

<ベートーヴェン>レミファド

  • 1番 ハ長調 Cdur
  • 2番 ニ長調 Ddur
  • 3番 変ホ長調 Esdur
  • 4番 変ロ長調 Bdur

「C-D-Es-B」はシューマンの4つが順番を変えているだけだ。これは当然シューマンがベートーヴェンを手本にしたと解さねばなるまい。しからばドヴォルザークはどうなっているだろうか。

<ドヴォルザーク>レドファミ

  • 1番 ハ短調 Cmoll
  • 2番 変ロ長調 Bdur
  • 3番 変ホ長調 Esdur
  • 4番 ニ長調 Ddur

「C-B-Es-D」だ。またまたシューマンの4つの変形である。さらにブルックナーだ。

<ブルックナー> レミファド

  • 1番 ハ短調 Cmoll
  • 2番 ハ短調 Cmoll
  • 3番 ニ短調 Dmoll
  • 4番 変ホ長調 Esdur
  • 5番 変ロ長調 Bdur

ここまで来ると笑ってしまう。1番と2番を同じ調で書いてしまうというのも珍しいが、しからばと5番を調べてのけぞった。「C-D-Es-B」だ。

ベートーヴェン、シューマン、ドヴォルザーク、ブルックナーの4人は、最初の4つ交響曲を作るにあたり、その調性を「B-C-D-Es」つまり「Bdurのドレミファ」の中から選択した。ベートーヴェンとブルックナーは「B」、ドヴォルザークは「D」、シューマンは「S」(Es)だ。「C」がいないと思ってはいけない。シューマンは「Sc」だから「Es」と「C」だ。つまりこの4人の頭文字が「Bdur」のドレミファになっている。

多分偶然だ。その証拠にプロコフィエフも相当怪しい。

<プロコフィエフ> ミレドファ

  • 1番 ニ長調 Ddur
  • 2番 ニ短調 Dmoll
  • 3番 ハ短調 Cmoll
  • 4番 ハ長調 Cdur
  • 5番 変ロ長調 Bdur
  • 6番 変ホ短調 Esmoll

これを笑わぬ手はない。

2008年8月 2日 (土)

新幹線

1964年10月1日に東海道新幹線は開業した。東京オリンピックに間に合わせたのだ。

新幹線は現在もなお国内都市間交通の根幹である。開業から40年以上を経た今も古い乗り物という感じは全くしない。時折投入される新型車両のせいばかりでもあるまい。40年を経過した今も古くないということは、開業当時は抜きん出て新しかったのかというとそうでもないような気がする。世界銀行から建設費用を借りる際「新しい技術は何もない。既存技術の集成である」というロジックに終始したという。実績の無い新技術には金を貸してもらえなかったからだとの関係者の苦労談を聞いたことがある。一見新技術最先端の塊に見えるが、実際には従来からの技術を実直に積み上げたものだという話には、妙な説得力がある。

没年から数えてもすでに100年をゆうに経過したブラームスの作品ではあるが、ちっとも古くない。数少ないカラオケの持ち歌を歌わされて、同席した若者から「ふる~い」という反応をもらうことがある。古いと思われたそれらの歌はたいてい20年以内の歌だ。ところが100年以上経過したブラームスの作品からは、その種類の古さは全く感じない。それではそうしたブラームスの作品は初演当時群を抜いて新しい未来の音楽だったかというとそうではない。むしろその逆だ。初演当時から「古い」と言って批判されたのだ。

初演当時「古い」と批判されたブラームス作品が100年の時の流れにもかかわらず輝きを失わず、時差にして8時間の空間をも飛び越えている一方、当時「未来の音楽」ともてはやされた音楽のいくつかは100年を経た現在、顧みられていない。

「新しい」「古い」ではない別のパラメータが関与していそうである。

1970年8月2日。今から38年前の今日、日本万国博に行くためにはじめて新幹線に乗った。

2008年8月 1日 (金)

ウェブクローラ

ウェブ上のサイトに定期的にアクセスして、文書や画像をデータベースに取り込むプログラムのことらしい。「ロボット」とも言われているようだ。語源は水泳のクロールと同じだ。ウェブ上を遊泳するかのような振る舞いがネーミングの由来だろうが、まさかスピード社のウエアを着てはいまい。

我がブログ「ブラームスの辞書」にもたまにやってくる。人間様とは思えない頻度で集中的にアクセスしてくるケースと、ポッツリポッツリというケースがある。訪問を受けたブログの側に悪影響があるのか判らないが、少なくともこれがカウンターの数字には反映してしまう。ブログの実態よりカウンターの数値が高くなるのだ。IPアドレスが判ればアクセス禁止にすることも出来るが、どこぞの検索エンジンのデータベースになっているのかと思うと邪険にも出来ない。

目に余るようならそれなりの対応も考えねばならない。今のところは静観だと思っていたが7月20日には貴重なキリ番123456番目のアクセスをロボットに踏まれたようだ。

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