歌垣
「うたがき」と読む。古代日本の習俗だ。年に1度あるいは2度、聖なる場所に若い男女が集って、歌を詠みかけ相手を探す行事。関東地方なら筑波山、関西なら椿市が有名だ。
近隣の集落から若者が集まったという。年頃になると「歌垣デビュー」というシーンが見られたはずだ。おそらく祭りの一環なのだろう。「今夜ばかりは無礼講」といったノリが想像出来る。近隣の集落から集まることに大きな意味がある。自集落の中だけで相手を探していたら、煮詰まればやがて近親婚の危険が排除出来まい。
夏祭りにもこの系統の起源を持つものが混在していそうである。
はてさてこのオープニングでブラームスネタに落とすのは神業が要る。
作品31の四重唱の中の1番「歌と踊りと」は、まさに「西洋版歌垣」と思える。「祭りの夜に目当ての娘を探して、歌って踊ろう」というテキストだ。そこで描写されるのは気取りも飾りもなくストレートに女性を求める男の姿だ。いささかなまなましいテキストながらブラームスの与えた旋律には品格が感じられる。今のところ一番気に入っている四重唱だ。テキストの意味を知らずに聴いていたのだが、もっと敬虔なシーンをイメージしていた。元々聖と俗は紙一重なのか、ブラームスの技法のせいなのか判然としない。
明日長女が浴衣を着て近所の盆踊りに出かけるという。なんだか心配だ。
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