フラット偏重
8月3日の記事「Bdur症候群」の続きである。
最初の4つの交響曲の調性選択にあたって、一部の作曲家が「変ロ長調(Bdur)」のドレミファという音列に準じているという趣旨だった。ベートーベン、シューマン、ドヴォルザーク、ブルックナー、プロコフィエフだ。
「Bdurのドレミファの音列に準ずる」とは、交響曲の調性が下記の8つから選ばれることを示している。
- 変ロ長調 フラット2個
- 変ロ短調 フラット5個
- ハ長調 調号無し
- ハ短調 フラット3個
- ニ長調 シャープ2個
- ニ短調 フラット1個
- 変ホ長調 フラット3個
- 変ホ短調 フラット6個
見ての通り全8種のうち6種がフラット系だ。つまりフラット偏重なのだ。シャープ系になるのはニ長調だけだ。実質的には、変ロ短調と変ホ短調は考えにくいから、選択の幅は6種だ。
Bdur症候群は、実質フラット偏重症候群とも位置づけ得る。ベートーベンの9曲は2番ニ長調と7番イ長調だけがシャープ系であり、すでにフラット偏重だ。後に続く作曲家たちは交響曲の総本山ベートーベン様に倣ったのだろうか。あるいは、移調楽器の都合でフラット便利な事情でもあったのかもしれない。
一方、ブラームスはCdur依存型である。
- 1番 ハ短調 フラット3個
- 2番 ニ長調 シャープ2個
- 3番 ヘ長調 フラット1個
- 4番 ホ短調 シャープ1個
シャープ系フラット系で見ても、長調短調で見ても2対2となる。ブラームスは自作4つの交響曲の全体像にも気を配っていた可能性がある。ただし、そうしたことを1番の完成時点で既に意識していたかとなると、ただちには頷きがたい。1番2番を続けざまに生み出した後、3番までの間に考えたと解したい。1番ハ短調、2番ニ長調と発表し、仮に3番4番に変ロ長調と変ホ長調を採用したら、Bdur依存型になっていたところだ。実際ブラームスは3番4番にヘ長調とホ短調を採用してあらゆる面でバランスを保った。
単なる偶然として放置するのは少々もったいない。
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