アルペジオ
「分散和音」と訳されて違和感がない。本来同時に発せられるべき和音の構成音を、時間差を持って鳴らすことと解される。9月24日の記事「伴奏ルネサンス」の中で3大伴奏パタ-ンの一つとして挙げている。ベ-ト-ヴェンのスプリングソナタの冒頭に気持ちのいいアルペジオがある。鍵盤楽器以外の楽器にとって、複数の音を同時に発することは多少の困難を伴うから、和音を表現しようと欲した場合しばしば「分散和音」が指向される。
上記のような意味合いに加え、鍵盤楽器にはもう一つの意味でのアルペジオがある。音は同時に発する和音として記譜されているのだが、音符の左側に波線が縦に付与されているケ-スだ。和音構成音が同時に鳴らされないから、これをアルペジオと称する場合がある。この手のアルペジオは手軽に「キラリ感」を演出出来るのだが、濫用は逆効果だ。ブラ-ムスはピアノのレッスン中、弟子が楽譜の指示のない場所でこの手のアルペジオ奏法をすることを戒めたという。安手の感情表現は必ず指摘されたと弟子の何人かが証言している。
また分厚い和音を好むブラ-ムスのピアノ作品では、和音の両端の音が開きすぎているために、手のサイズによってはしぶしぶアルペジオに逃げ込まざるを得ない場合もあって悩ましい。
がしかし、3大伴奏パタ-ンに挙げてはいるのだが、残りの2つ「後打ち」「刻み」とは少々位置づけが違う。「アルペジオ」が伴奏声部に出現することは確かなのだが、構成音の出現の順序に工夫が凝らされることで、しばしば旋律との境界が曖昧になる。ブラ-ムスのヴァイオリン協奏曲の第一楽章の136小節目、独奏ヴァイオリンを支えるヴィオラのアルペジオは、単なる伴奏の域を超えた有り難みを感じる。
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