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2008年11月17日 (月)

遺作

故人が遺した作品のうち未発表のものとでも定義されよう。

発表を前提とした芸術作品でなければならない。プライベートな文書や遺書、あるいは書き置きは含まれない。マニアにとってのお宝度、骨董的な価値とは関係がない。「発表を前提とした」というところがミソだ。故人が発表の意思を持っていたということが前提だ。本人は発表に値しないと考えていた作品が、ひょんなことから廃棄を免れて、死後発表されるケースを含めてはいけないのだ。

このような定義を厳密に適用するとブラームスには遺作が無いということになる。

父が11年前に亡くなった時、遺品の中から自作の俳句集が見つかった。俳句が晩年の父の生活を豊かに潤していたこと疑う余地はない。句作のメモに混じって一冊の句集が見つかった。タイトルは「初孫」だった。父にとっての初孫つまり私の長男の誕生から1年間、折に触れて作った句から孫に関するものだけを抜き出して、簡単な詞書きとともに書き記した物だ。孫といっしょの泣き笑いが活写されている。「孫に名句無し」と自嘲していた父が、言葉とは裏腹に初孫の句集を残したのだ。

3人の子供に残してやる記録について、我が家には方針があった。「記録が年長の子供ほど手厚いという状態に断固陥らない」というものだった。初めての子供である長男が誕生したとき、日記、写真の残し方を決めた。「第2子以下にもやってあげられることしかやらない」という観点から熟考した。だから我が家の子供たちの日記や写真は皆同等の濃さであり分量なのだ。

しかし、父の句集「初孫」は、大きな例外になった。3人の子供たちの中で長男にだけ、おじいちゃんの句集が残っているのだ。父が亡くなった時、5歳だった長男にとっては宝物だ。

厳密な遺作の定義とははずれるが、私にとっては十分に遺作である。

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コメント

<魔女見習い様

お参りありがとうございます。

お父様のご冥福をお祈りいたします。

ブラームス神社でも、お参りさせていただきますね。

<もこ様

コメントありがとうございます。

子供たちにはまだ有り難味が実感出来ないようです。

お久しぶりです。
素敵なお話ですね。
心がほっこりと温かくなるような遺作ですね。

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