ヴィアドリーナ
大学祝典序曲のタイトルは「ヴィアドリーナ序曲」になっていたかもしれなかった。
ブレスラウの大学から博士号の授与の返礼として作曲された「大学祝典序曲」のタイトリングにブラームスがあれこれ腐心した様子が記録に残っている。
当時も今もブレスラウはけして田舎ではない。現在はポーランド領となっており、ポーランドではブレツワフと呼ばれているが、ブラームス存命中はドイツ領だった。ポーランド西部を北流し北海に注ぐオーデル川のほとりに開かれた街がブレスラウである。そしてそのオーデル川の古い呼び名が「ヴィアドリーナ」だったという訳だ。いかにもドイツっぽい「オーデル川」という名称に対して「ヴィアドリーナ」はイタリアの香りに満ちている。ローマに起原を遡れそうな感じである。
結局ブラームスは「ヴィアドリーナ」を採用しなかった。イタリア好きのブラームスではあるが、ドイツの学生歌が頻繁に現れる作品にイタリア風の命名をためらったのかもしれない。
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