葬送頌歌
音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻16ページ。ホイベルガーはブラームスとの出会いを回想する。
バッハの「葬送頌歌」を演奏したとき、ブラームスがオルガニストの手許をロウソクで照らしてやっていたと証言する。
ここに疑問がある。バッハの「葬送頌歌」とはいったいどの曲のことだろう。記述にはBWV番号が記載されていないから個体の特定が難しい。この本には巻末に作品索引がついていて大変重宝だが、その対象はブラームスの作品に限られている。バッハの作品は対象外だから役に立たない。ブラームス以外の作曲家の作品まで網羅した索引だったらお宝度は相当アップしたと思われる。
さて「葬送頌歌」と通称される作品はフランツ・リストには存在するが、バッハで見つけることが出来ない。ホイベルガーは「バッハの」と断言しているからリスト作曲ではあり得まい。
第一の候補はBWV198の「候妃よ、さらに一条の光を」だ。「Trauer Ode」と通称されているから、我が家の解説書では「哀悼頌歌」とされている。「Trauer」の訳語として「葬送」が間違いとも言えないから「葬送頌歌」とされたのかもしれないが、リストの作品と紛らわしいこともまた事実だ。
さらに昨日の記事の主役「アクトゥス・トラジクス」の可能性は無いのだろうか。話題になったカンタータ106番の通称「Actus Tragicus」が「葬送頌歌」と表現されている可能性だ。とはいえ「頌歌」は大抵「Ode」の訳語だから、この説はどうにも旗色が悪い。
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