アクトゥス・トラジクス
興味深いCDを発見した。
この2枚組アルバムのタイトルは「BRAHMS BACH」だ。ストライクゾーンの中央という感じがする。演奏はチェロとピアノの二重奏でメインはあくまでもブラームスだ。2つのチェロソナタとト長調ヴァイオリンソナタ「雨の歌」のチェロ編曲版の3曲の前に、バッハのカンタータの中からの編曲物が置かれている。
- バッハ:カンタータ第78番BWV78よりアリア
- ブラームス:チェロソナタ第1番op38
- バッハ:カンタータ第106番BWV106アクトゥス・トラジクスよりソナティナ(ピアノ独奏)
- ブラームス:チェロソナタ第2番op99
- バッハ:カンタータ第33番BWV33よりアリア
- ブラームス:ソナタニ長調
演奏は2人の女性。チェロがSonia Wieder-Atherton、ピアノがImogen Cooperとある。
お気に入りは上記の3番だ。カンタータ第106番は、バッハが忘れ去られていた時代にも例外的に人気があった。葬送用の音楽としてしばしば演奏されていたという。だから本来のタイトル「神の時は最上の時なり」と並んで「アクトゥス・トラジクス」(哀悼行事)と通称される。その第1曲のリコーダーの静溢な二重奏がピアノ独奏に編曲されている。オリジナルのリコーダー二重奏は大の気に入りなので、どうなることかと思ったがすんなり入って来た。
ブラームスの数ある室内楽のなかでもチェロソナタ第1番はとりわけバッハとの関係が深い。タイトリングといい選曲といい、バッハとブラームスのただならぬ関係を意識していると思われる。とはいえこのCDがブラームスの室内楽の売り場ではなくて、バッハの編曲物の売り場にあったというのが、嬉しいような悩ましいような感じである。
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