家計簿
家庭でのお金の出入りを記録する帳簿。昨今はもちろん紙ばかりではない。パソコンに入力というケースもある。家庭という切り口でお金の流れを把握することがねらいである。これが火の車に載せられているケースも少なくないと聞く。国庫から資本の注入を受けたいくらいである。
毎年正月には、今年こそはとばかりに手をつけて年末を待たずに挫折する人もいる。
1854年2月ロベルト・シューマンはライン川に身を投げる。一命を取り留めるがエンデニヒの病院に入院することとなった。急を聞いて駆けつけたブラームスは、シューマン一家のために家事全般を引き受けたという。二十歳そこそこの青年らしからぬ献身ぶりを見せるのだ。
ブラームスはその年の12月30日まで、シューマン一家の家計簿をつけていたらしい。現代日本で一般的に用いられる意味の家計簿と同じ形式なのかはわからないし、収入支出があるたびに毎日つけていたのか、月末にまとめてつけていたのかも不明だ。ブラームスが相当信用されていたことだけは確かなところだ。
ここで話を終えてしまうと、「ブラームスってマメなのね」で終わってしまう。例によってしょうもない疑問がある。当時のドイツの家庭では家計簿は一家のメンバーのうちの誰が書き記すものだったのだろうか。1854年1月以前は誰がつけていたのだろう。シューマン夫妻の子供たちではないと思う。長女のマリエでさえまだ10代半ばだからだ。クララかロベルトか、はたまた使用人か。一家のお金の出入りを使用人にさせるとは考えにくい。全くの推測だが精神病の兆候が既に現れ始めていたロベルトではないような気がする。
クララが家計簿をつけていたが、ロベルトの入院によって、一家を支えなければならなくなった。つまり演奏家として働きに出るのだ。月末に家を空けることもあるから、そこをブラームスが代行したと考える。
今日は11ヶ月に及んだブラームスの家計簿担当が終わった日だ。
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