佳き人よく見
佳き人の 良しとよく見て 良しと言ひし 吉野よく見よ 佳き人よく見
万葉集巻1に天武天皇の御製として納められらた歌だ。吉野を誉める内容である。高貴な人が誉めることは言霊的に、意味があるとされている。国誉めと同列だと思われる。ここで言う吉野が桜で名高い奈良県の吉野だと解してよいのか議論もあるようだ。
難しい論争は専門家にお任せするとして、気になることがある。この歌には「よ」が頻発するのだ。全部で9回も「よ」が出現する。第3句が字余りだから合計32音の4分の1超28.1%が「よ」ということになる。異様な密集ぶりである。「よ」を意図的に重ねたと推定出来る。
よ○○○○ よ○○よ○○○ よ○○○○○ よ○○よ○○よ よ○○○よ○○
各句の先頭は全て「よ」である。
「ブラームスの子守歌」で名高い「Wiegenlied」op49-4は変ホ長調4分の3拍子、全長18小節の小品だ。18小節全てにおいてピアノの左手は必ず低い「Es」音で始まっている。「オルゲルプンクト」あるいは「ペダル音」というにはあまりに可憐だ。
天武天皇の御歌の「よ」は、この「Es」18回に通ずるような気がしてならない。
こじつけもここまで来ると芸術の域。
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