ひそやかに月は昇りて
「49のドイツ民謡集」WoO33のラスト49番目の作品。この民謡集は7曲一組の構成になっていて、その7組目つまり43番から49番までの7曲が合唱用という位置づけだ。つまりこの「ひそやかに月は昇りて」も合唱が入る。現実にはソプラノ独唱と合唱だ。
この作品が「49のドイツ民謡集」の最後を飾っていることには深い感慨がある。1894年発表ということで実質上ブラームス最後の合唱曲なのだが、旋律はどこかで聴いた感じなのだ。それもそのはずブラームスの記念すべき作品1のピアノソナタ第1番の第2楽章そっくりそのままだ。こちら第2楽章には楽譜五線の下に歌詞が書かれ、クレッチマーとツッカルマリオの民謡集からの引用である旨明記されている。その原曲のありようを現実に示してくれているのがこの「ひそやかに月は昇りて」WoO33-49だ。ブラームスが創作生活の最後に放つ、処女作の種明かしであるかのようだ。
独唱が静かに先行し、合唱がそれを包むように和する書法が、ピアノソナタの側にもキッチリと表現されている。最後の合唱作品とピアノソナタ第一番op1第2楽章が、旋律的に繋がっている。
キーワードは循環と再生。
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<魔女見習い様
はい。人生の大半を股に掛けた大がかりな仕掛けです。
投稿: アルトのパパ | 2009年2月 2日 (月) 06時45分
晩年のブラームスが・・・と思うと、
さらなる感動を覚えてしまいます。
投稿: 魔女見習い | 2009年2月 1日 (日) 21時44分