混声合唱と弦楽四重奏
混声合唱の代表的な形態と言えば「混声四部合唱」だ。ソプラノ、アルト、テノール、バスである。男の子の声変わりを待たねばならないので中学校から始めるのが一番早いかもしれない。それでも大抵男の子のメンバーが集まらない。私も中学3年の時バスケットボール部なのにかり出された経験がある。今カラオケをすればハイノート得意のテノールなのだが、当時は有無を言わせずバスになった。多分声変わりが終わっていたせいだ。
さて一方室内楽の代表的なジャンルに弦楽四重奏がある。2本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成だ。古来名だたる作曲家たちを魅了してきた水も漏らさぬ布陣である。パートが4つという、シンプルな共通点から混声四部合唱と比較してみる。
- ソプラノ→第1ヴァイオリン
- アルト→第2ヴァイオリン
- テノール→ヴィオラ
- バス→チェロ
中学生の答ならこれで上出来だろう。しかし音域は別として、音質声質のイメージあるいはブラームス作品での位置付けから考えると大いに違和感がある。違和感の大きさとして真っ先に目に付くのが「テノール→ヴィオラ」の組み合わせだ。テノールが持つイメージを総合すると私の中では「チェロの高音域」が最も近い。次の違和感は「アルト→第2ヴァイオリン」だ。ブラームス好きたるもの、ここは断固「アルト→ヴィオラ」を主張せねばなるまい。違和感第3位は「バス→チェロ」だ。これは多分に言葉尻だけかもしれないが、是非とも「バリトン→チェロ」にして欲しいものだ。以上をまとめると下記のようになる。
- ソプラノ→ヴァイオリン
- アルト→ヴィオラ
- テノール→チェロ
- バリトン→チェロ
見ての通りチェロが重なっている。創作の初期においてブラームスが室内楽に手を染める際、チェロを増強する傾向を隠していないことと符合するような気がする。弦楽六重奏が2本のチェロを要求している他、作34を背負うヘ短調のピアノ五重奏は、弦楽四重奏にチェロを加えた五重奏として構想されていた。女声合唱中心とはいえ合唱指導の経験豊かなブラームスの経歴を考えるとなかなか面白い。
<田中文人様
かれこれ2年前の記事に心強いコメントをいただき舞い上がっておりますが、話自体は鵜呑み厳禁にてお願いいたします。
投稿: アルトのパパ | 2011年2月 5日 (土) 19時03分
なるほど鋭い! と思いました。
投稿: 田中文人 | 2011年2月 5日 (土) 18時36分