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2009年3月24日 (火)

楽器の王様

多分「ピアノ」のことなのだと思う。

演奏可能な音域の広さ、音量、同時に鳴らせる音の数、広大なダイナミクスレンジ、どれをとってもキングの称号が相応しい。弱点は持ち運びが不便、発音後のクレッシェンドが出来ないことくらいか。

室内楽ではピアノ以外の楽器は、ピアノによって伴奏されることが当然と捉えられている。断りなくソナタと言えばピアノ伴奏を指す。ピアノ伴奏が付かないときにだけ「無伴奏」と注釈が入る。あのバッハでさえピアノ伴奏を伴わないことを「senza basso」と呼んで特別視した。ピアノ独奏用のソナタを「無伴奏ピアノのためのソナタ」とは呼ばない一方で、ヴァイオリンソナタの本名は「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」という。ピアノがあくまでも先である。まだある。ピアノ、ヴァイオリン、チェロの三重奏はピアノ三重奏と呼ばれる。四重奏でも五重奏でも事情は同じだ。

恐らく、演奏人口もピアノが最大ではないかと思う。

さて、こんなに無敵に見えるピアノも歯が立たないことがある。それは「人間様の声」だ。独唱歌曲の楽譜には「Dueto」とは書いていない。ソプラノとアルトの二重唱は、たとえピアノ伴奏であっても「Trio」とは書かれずに「Dueto」となっている。ピアノがカウントに入っていないのは明らかだ。器楽では王様として君臨していたピアノも相手が声楽となると分が悪い。

人間様の声は、どのような楽器とのアンサンブルでも耳に届き、けして埋没しない。ブラームスもそのことは知っていたと思う。人間の声をダイナミクスのさじ加減でアシストしていない。テキストへの共感さえあればニュアンスの指図は不要と考えていた形跡さえある。中期以降歌曲の声楽パートへの音楽用語の配置が激減する。歌詞が理解できて音程が取れれば十分と考えていたかのようだ。特に独唱者への指図は本当に希になる。

「楽器の王様は人の声だ」というオチは、はたして無謀だろうか。

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コメント

<めり様

これはこれは、かたじけない。

ショパン殿によろしうお伝えくだされ。

<魔女見習い様

これはこれは、早速の賛成票、心強い限りです。

無理目の提言ですので、ハラハラしておりました。

ピアノの詩人と言われるショパンも、「あらゆる音の中で一番美しいのは人の声とチェロだ」と言っております。
ほんと、他の楽器の音に埋もれませんよね。不思議。

「楽器の王様は人の声」に賛成です。
テキストの役割は大きいと思います。

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