46の和音3連発
「霊感の涸渇をごまかすために46の和音を用いてはならない」
ブラームスはこう言って弟子のグスタフ・イエンナーを戒めた。46の和音とは和音の第二展開形のニックネームだ。
作品が出来上がったら46の和音の場所を全部抜き出して必然性が伴っているかチェックせよと言うのだ。イエンナーは後年この方法が非常に有効だったと回想している。
「まどろみはいよいよ浅く」という歌曲がある。作品番号105-2を背負う。全長53小節の小品ながらブラームス後期歌曲の代表作という位置付けにある。
その43小節目にGdurの46の和音がある。音名にして低い方から「DGH」だ。この和音の骨格は2小節続き、45小節目ではBdurの46の和音になる。音名にして「FBD」だ。2連続の46の和音だが、驚いてはいけない。さらに2小節後の47小節目には「AsDesF」つまり変ニ長調の46の和音が現われる。つまり「DGH」→「FBD」→「AsDesF」という具合に46の和音が3回連続で出現しているというわけだ。
作品の草稿を送られたリーズルことエリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルクは、この46の和音の連続に「掟違反だ」と噛み付いた。ブラームスもそれを認めているが、結局これを最終稿とした。
つまり必然性が説明出来るということだ。むしろこの進行こそが「まどろみはいよいよ浅く」を結末に導く重要な手順になっていると感じる。
でもって今日は4月6日である。
明日から歌曲特集は10日間の休憩に入る。記事の更新は続くがカテゴリー「31 歌曲」に属する記事を公開しない。
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